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 「うわぁ、今日は特に暑かったせいか、家の中がもわっとしている」。真夏に帰宅して、玄関の扉を開けた瞬間、暑くてじめじめした空気が体にまとわりついてきて、不快に思ったことはないだろうか。こんなとき、外出先からスマートフォン(スマホ)や携帯電話機でエアコンのスイッチを入れられれば便利だ。帰宅前にエアコンを稼働させ、到着するまでに家の中を快適な温度まで冷やしておける。

 だが、これまではエアコンなどの電気用品*1に、こうした遠隔操作機能(スマホや携帯電話機で外出先から電気用品の電源をオンにする機能)を盛り込むことはできなかった。電気用品による危険や障害の発生を防止するための法律「電気用品安全法」(電安法)で禁じられていたからだ。

*1 電気用品 大まかには「一般用電気工作物(ざっくりといえば、コンセントに差し込む電源プラグが直付けになった交流で動く電気用品)」「携帯発電機」「蓄電池」を指す。ただし、電安法の適用対象となる品目は、政令(電気用品安全法施行令)で指定されたものに限られる。現在、457品目が指定されている。

 しかし、それがついに、所定の要件を満たすことを条件に可能になった。電安法に関わる技術基準を定めた省令「電気用品の技術上の基準を定める省令」(省令85号。以下、技術基準省令)の解釈を規定した通達「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈」(平成24・01・10商局第1号。以下、電気用品の技術基準の解釈)が、2013年5月10日に改正されたからだ。

断念せざるを得なかったパナソニック

図1●2012年8月21日、パナソニックが発表したルームエアコン「Xシリーズ」
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図2●ルームエアコン「Xシリーズ」に搭載予定だった、外出先からの遠隔操作のためのスマートフォン用画面
2012年8月21日発表時のもの。
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 2012年8月21日、パナソニックは、スマホを通じてクラウド型サービスなどと接続できる「スマート家電」の新製品6機種を発表した(関連記事)。その新製品の1つが、ルームエアコン「Xシリーズ」(図1)。「外出先からスマホでスイッチのオン/オフができる」「スマホを使って、帰宅前にエアコンのスイッチを入れておける」といったスマホによる遠隔操作を1つの“売り”とした製品だった(図2)。しかし、その22日後(同年9月12日)、パナソニックは同エアコンへの同機能の搭載見送りを発表した。

 パナソニックに何があったのか――。実は、冒頭でも触れたように、パナソニックがXシリーズに搭載しようとしていた遠隔操作機能が、電安法に抵触していた。それが発表後に判明したことから、同機能の搭載を断念せざるを得なかったのだ。

 この件については、電安法に対する確認不足という点からパナソニック側に落ち度があったことは否めない。ただ、パナソニック側にも同情の余地はある。NTTドコモの「ケータイホームシステム」などの存在だ。これは、同システムに対応する家電機器を接続することで、外出先から携帯電話機でエアコンや照明器具などの電源をオン/オフできるようにするものだ。しかし、このシステムは電安法に抵触しないとされる。それなのに、なぜXシリーズは抵触するのか――。この分かりにくさが、パナソニックを混乱させた1つの要因といえるのではないだろうか。

 ケータイホームシステムが電安法に抵触しないのは、電安法があくまでも電気用品そのものを規制している法律だからだ。ケータイホームシステムは、そうした電気用品を制御する外部システムという位置づけであり、電安法が対象とする電気用品とはみなされない。これに対して、Xシリーズのスマホによる遠隔操作機能は、エアコンという電気用品そのものの機能と捉えられる。このため、電安法の対象になるのだ。