さまざまな人が使える点を高く評価
「シャワーヘッドと一体化したドライヤー」


講評:「最も面白かったプレゼンテーション」という賞をあげたい。冬は寒いから風呂場で髪を乾かしたいというのは面白い発想だ。ここを深く掘り下げればもっとアイデアが出てくる。
「走行速度に応じて後輪の数が変化する自転車」


講評:非常に完成されたアイデアなので、事前に自転車を研究してきたのかと思った。アジアは自転車が大量に普及しているので、ビジネス機会は大きい。ユーザーは高齢者を想定しているようだが、子供を乗せるお母さんにも受け入れられるのではないか。
「食器を横向きに差せる棚」

講評:いくつも重ねて収納できるフライパンという製品が存在するが、個人的には下側にあるフライパンを取るのは大変だろうと感じていた。その問題に対する解決策としての発想はいい。この棚に向かって食器を投げることで収納できると面白い。
McCulloch氏と田川氏による審査の結果、最優秀作品にはチーム10の「シャワーヘッドと一体化したドライヤー」、次点の優秀作品にはチーム11の「走行速度に応じて後輪の数が変化する自転車」が選ばれた。いずれも、実際に製品化できる可能性が高く、さまざまな人が使える点を高く評価したという。
今回のワークショップで学生たちが習得したもの。それは、目的を抽象化すれば常識や既成概念を打破できることではないだろうか。その重要性の理解が深まったことは、従来の常識にとらわれることなく、斬新なアイデア(解決策)を試作品として形にした彼らの取り組みが物語っている。
デザインエンジニアは、ユーザーがモノやサービスを使う際の“体験”を設計する職業ともいえるだろう。ユーザー体験の設計は、日本のメーカーが苦手とする分野だ。斬新なアイデアの製品を開発していく上での喫緊の課題でもある。実は、Dyson社には日本人のエンジニアやデザインエンジニアはいない。一連のワークショップから日本発のデザインエンジニアがどれぐらい誕生するのか。Dyson社の取り組みは、日本のメーカーが目指すべき方向性と一致している。
では、新しい発想で製品を洗練させるデザインエンジニアに求められる素養はどのようなものか。次回からは、ワークショップの最後に組まれていた、McCulloch氏と田川氏による対談の模様を通じて、「デザインエンジニアとは何か」に迫っていく。