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 造れば売れる時代は、とうに過ぎ去った。造るべき物が見えにくい今ほど、創造的なアイデアが求められている時代はないだろう。そうした中、創造的なアイデアを生み出す「デザインシンキング」を世に広めようとしているのが、社会人主体の大学院である慶応大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(以下、慶応SDM)だ。デザインシンキングとは何か、既存の発想法とはどう違うのか、そして世界でデザインシンキングはどう活用されているのかといったことについて、慶応SDM非常勤講師であり、コンサルタントとしてデザインシンキングの活用支援を手掛ける富田欣和氏に聞いた。(聞き手は高野 敦=日経ものづくり)

――慶応SDMでは「デザインシンキング」あるいは「イノベーティブ・シンキング」と呼ぶ手法を研究・活用しています。『日経ものづくり』誌でも連載していただいたわけですが、その中には「ブレーンストーミング」のような広く知られているものも含まれているので、「創造的なアイデアを生み出す」という目的は理解できました。ただし、既存の発想法とはどう違うのかという疑問がまずありました。

富田欣和(とみた・よしかず)氏
慶応義塾大学大学院非常勤講師。同大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科でデザイン・プロジェクトや起業デザイン論、イノベーティブ・ワークショップ・デザイン論などを担当。イノベーティブ・デザイン合同会社代表としてイノベーティブ思考によるソリューション開発支援を手掛けるなど、数社を経営している。実務に生かせる社会システムデザインやイノベーション・マネジメントの研究に取り組んでいる。同大学大学院修士課程修了(システムエンジニアリング学)。

富田氏:デザインシンキングは、システムをデザインすることとも言い換えられるのですが、その場合にブレーンストーミングのような「アイデアをどんどん出していく」という発散的な手法だけでも不十分ですし、逆にシステマティックに具現化する収束的な手法だけでも不十分です。要は、その両方が大切なのです。そういうと多くの人に納得していただけるのですが、その発散と収束をどういうバランスで組み立てていくのかということが重要なポイントになります。

 そして、その組み立てを体系的に実践できているのが慶応SDMであると自負しています。それは、慶応SDMにもともと「ものづくり」をやっていた教員が多いことに加え、「システムズ・エンジニアリング」という共通の体系を持っているからです。あまりいい区分ではないかもしれませんが、文系の人も理系の人もこの共通基盤の上で会話を交わせるので、ここは発散させた方がいいねとか、ここからは収束させようということを議論できるのが強みといえます。

――アイデアを発散させたり収束させたりする手法はそれぞれあるけど、両方の手法をバランス良く使いこなせる人は少ないということでしょうか。

富田氏:ある日は発散、次の日は収束、という進め方は珍しくありません。しかし、1回のワークショップで発散と収束の両方を組み込んでいるのは、あまり聞いたことがありません。こうした手法は、欧米の大学の研究者からも面白いといわれるので、体系的に組み立てているという意味で慶応SDMは先端を走っているのではないかと思っています。もしかしたら個人ではそうした手法を展開しているかもしれませんが、慶応SDMのように研究科単位で取り組んでいる組織はないと思います。