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 英Dyson社のワークショップでの講義と試作を通じて「デザインエンジニア」の仕事の一端に触れた東京大学や東京芸術大学の学生たち(第1回第2回参照)。最後は、2人の現役デザインエンジニアが学生にアドバイスを送った。ワークショップの講師を務めたダイソン シニアデザインエンジニアのAndrew McCulloch氏と、工業製品やソフトウエアのデザイン/設計を手掛けるtakram design engineering(東京都港区)代表でデザインエンジニアの田川欣哉氏である。

 両氏は、英Royal College of Art(RCA)の同級生という縁がある。RCAは美術・工業デザインに関する大学院大学で、Dyson社創業者のJames Dyson氏もその出身者の1人だ。McCulloch氏と田川氏はなぜデザインエンジニアを志したのか、そして企業や社会の中でデザインエンジニアはどのような役割を果たしているのか。彼らの言葉には、ものづくりに携わる日本のエンジニアが進むべき方向性がふんだんに盛り込まれている。(司会進行はダイソン コミュニケーションズ 統括マネージャーの神山典子氏)

 Dyson社は世界18カ国の工学および工業デザイン系の学生・卒業生を対象に「日常の問題を解決するアイデア(作品)」を募集する「James Dyson Award 2013」を開催しており、田川氏はその国内審査委員も務めている。

――それでは最初に田川さんから自己紹介を兼ねて、ご自身の経歴を振り返っていただけますか。

田川:こんにちは、田川欣哉です。先ほど皆さんのプレゼンテーション(第2回参照)を聞かせていただきました。非常に良かった。面白い内容でした。

takram design engineering代表の田川欣哉氏
takram design engineering代表の田川欣哉氏

 僕は東京大学の(工学部)機械工学科を1999年に卒業したのですが、大学3年生の夏頃に同じようなワークショップでこの製図室を使いました。その時はペーパー・カーを作るという授業で、紙とかまぼこ板、モータ、モータボックスだけを渡されて、ペーパー・カー同士で綱引きをするという内容でした。今日は久しぶりにこの部屋に入りましたが、そのことを懐かしく思い出しました。

 アンディ(McCulloch氏)とは、RCAで2年間同級生でした。RCAにはJames Dysonさんがスポンサードしている「Industrial Design Engineering」(当時の名称、現在は「Innovation Design Engineering」、以下IDE)という専攻があります。IDEは工学部系の学生が入れる世にも珍しいアートスクールで、僕はそこに通っていました。ここにもIDEに行きたいと思っている人がいるかもしれません。

 RCAを出てから日本に帰り、山中俊治さんというプロダクト・デザイナーのオフィス(リーディング・エッジ・デザイン)で5年ほど働き、2006年にtakram design engineeringという会社を共同設立しました。その後は、アートスクールやエンジニアリング・スクールで学んだデザインエンジニアを集めて仕事をしています。

もっとチャレンジングな仕事がしたい

ダイソン シニアデザインエンジニアのAndrew McCulloch氏
ダイソン シニアデザインエンジニアのAndrew McCulloch氏
McCulloch:ずっと会っていなかったので、この場で田川さんと一緒にいることを不思議に感じています。

 私自身は、大学で機械工学を学びました。大学卒業後に就いた仕事はちょっと退屈だったので、もっとチャレンジングな仕事がしたいと思うようになったのです。

 そこで、単なるエンジニアではなくデザインエンジニアを目指して大学院で勉強しようと考えました。そのときに見付けたのがRCAで提供しているコースです。RCAには世界中から学生が集まっていたので、さまざまな情報を知ることができましたし、アイデアも共有できました。

――RCAに興味を持っている学生はたくさんいます。RCAで学んだ内容はどう素晴らしかったのでしょうか。

田川:僕もアンディもそうですが、RCAにはもともとエンジニアを志していたけれども、自分がやりたいことはちょっと違うと思った学生が集まってきます。RCAは、日本でいうと東京芸術大学のような学校です。ただ、学部はなくて大学院しかない。

 僕らが通っていたIDEは、RCAの中でもかなり特殊です。RCAは、どちらかというと油絵や彫刻といった分野のピュアなアーティストが多い。その中でIDEは、RCAがその隣にある英Imperial College Londonと教員を出し合って共同で設置しているコースです。Imperial College Londonは、日本でいうと東京工業大学のようなイメージでしょうか。

 IDEは、20年ぐらい前から世界中の学生を集めています。創造的にエンジニアリングを実践できる学生を育てることが目的で、恐らく、全体の3分の1から半分は英国外の学生です。

 世界的に見ると、米Stanford Universityにも同じようなコースはあります。ただ、Stanfordはどちらかというとエンジニアリング・スクールの中にデザインが入っているという印象です。RCAはその逆で、アートの世界にエンジニアリングを加えた。僕らにとっては、その方が新鮮でした。

■変更履歴
記事掲載当初、田川氏の名前を間違って表記していました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2013/06/17 20:40]