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「実事求是」とBYD

 2次電池と電気自動車で知られる中国BYD社(比亜迪)の成功の原点は、中国の豊富な労働力を活用した低コスト化を可能にする経営手法にある。リチウムイオン電池や自動車の全自動生産ラインを自社で保有するには、相当の投資が必要になる。しかし、創業時のBYD社は、民営企業ということで中国政府から資金支援を得難かった。そこで、BYD社は生産ラインを立ち上げる際、常識破りで大胆かつ合理的な改革を行った。

 例えば、リチウムイオン電池の生産ラインは、高い空気清浄度を保つクリーンルーム内に設置されることが一般的だが、BYD社は自分たちでできる範囲の工夫を施した。生産ラインが置かれる作業場全体をクリーン化するのではなく、必要な部分にだけ空気清浄度を保つ「ボックス」のような空間を作ったのだ。こうして、クリーン度を確保して品質を守ると同時に、設備に必要な費用を大幅に削減した。生産ラインそのものについても、全自動や無人操作を追求する代わりに、廉価で豊富な労働力を活用する道を模索した。それにより、全自動ラインに匹敵する品質を確保できる低コストな半自動ラインを実現し、BYD社ならではの強い価格競争力を手中に収めたのだ。

 欧米や日本の同業他社と同じような生産手法を用いていては、短期間に同業他社に追い付くことは不可能だ。「実事求是」の思想をベースに、技術軽視ではなく、現実に見合った合理的な手法を独自に確立する。それがBYD社の躍進の源泉になっている。ちなみに、BYDとは「Beyond Your Dream」から名付けた社名だ。