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どうしてビジネスに適用できるか

 毛沢東思想は、これまで紹介してきたように、中国企業の企業戦略、経営戦略、技術戦略、競争戦略との相性がいい。それは、毛沢東思想が戦時中に生き残りや勝利を意図して生まれたことにも関係している。すなわち、戦略とは、ある目標を達成するために、長期的かつ俯瞰(ふかん)的な視野でリソースを総合的に運用する方策である。戦いや戦争は、敵対者への攻撃・攻略を対象としているが、企業の生き残りや発展も、激しい競争の中での競争相手との戦いが前提にある。そのため、戦争による戦略論は、ビジネスにおいても有用性が高いと言われている。実際、戦争論を中心とする「孫子兵法」や「三国演義」も、今でも依然として人気が高くて、ビジネスに応用されている。

 この点に加え、毛沢東と中国共産党が当時直面していた生存環境が、現在の中国の民営企業が直面している生存環境とかなり似ていることも、中国企業に対する毛沢東思想の有用性に関係している。いずれも内外に強い競争相手が存在し、劣勢を強いられているといった点に共通性がある。弱者としていかに生き残るか。そのための知恵を毛沢東思想から得られるのだ。

 さらに、中国社会や中国文化の特徴と実情を考察した上で、マルクス主義を中国の実情に結びつけることで生まれた毛沢東思想は、中国の実情を重視する大切さを中国の起業家たちに伝える。先進国から見れば技術の面では後発の中国企業にとって技術をまねることは避けられないところもあるが、経営理念や経営手法などについては、先進国のものが必ずしも中国に適用するわけではない。世界をリードする海外の企業を追いかけ追い越していくためには、毛沢東思想からヒントを得て、中国ならではのビジネス競争戦略、つまり中国流のイノベーションが必要だ。実際、これまで紹介してきたように、毛沢東思想は、中国の実ビジネスにおいて中国ならではのイノベーションの発想の源泉になっている。