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 前々回・前回はフリスの伝達公式から空間・周波数・パワーと通信距離の相関について解説し、通信距離を延ばすには周波数が低いほど有利であること、無闇にパワーを上げても距離は大して延びないこと、アンテナを工夫すればパワーを上げたのと同じ効果があることを示しました。今回はそのアンテナのお話です。主に指向性という観点から、各種アンテナの特性とその用途について解説します。

アンテナの性能とは?

 アンテナの指向性能は「利得(ゲイン)」と呼ばれ、一般的に「dBi」という単位で表現されます。iはアイソトロピック(Isotropic)の頭文字で、全方位に均等な感度を持つ理想的な無指向性アンテナの感度を基準としたとき、対象となるアンテナの最大感度方位における倍数を常用対数(10log10n)で表したものです。稀に「dBd」という単位が使われることもありますが、これは理想ダイポールアンテナ(利得2.15dBi)を基準とした表記で、dBi=dBd+2.15で換算できます。

 アンテナの指向性が高ければ高いほど、その性能を最大限に発揮できる方向は狭くなって文字通りピーキーになります。信号源方向とアンテナのピーク指向性方向が合致しないと、その信号を受信できる能力は無指向性より逆に下がることになります(利得が0未満になります)。つまり指向性アンテナの性能表記には「利得」以外にも「その利得が発揮できる角度範囲」という数値が併記されなければなりません。この角度は利得がピーク値から-3dBになる範囲を指し、「半値角(Half-Power Angle)」と呼びます。例えば最大利得3dBiのアンテナであれば0dBまでの角度が半値角ですし、最大利得が0dBiならば-3dBiまでの角度が半値角となります。どの角度でも変動幅が-3dB未満に収まるならば、全周360度にほぼ均等な性能を持つ無指向性アンテナということになります。

 アンテナの指向特性は対称であるとは限らず、水平面(上から見た場合)と垂直面(横から見た場合)で異なります。慣例的に垂直面をE-Plane、水平面をH-Planeと呼びますが必ずしも「縦/横」を意味している訳ではなく、本来は電磁波伝達における電気面(E)/磁気面(H)の記号を表わしています。

 アンテナの基本形であるダイポール・アンテナを地面に対し垂直に立てた場合、電気面の振動が垂直・磁気面の振動が水平に現れるので「慣例的に」E/Hを垂直・水平と見做しても構わないのですが、アンテナの形式や設置形態によっては必ずしもE/Hと天地の方向は一致しないので注意してください。

 一口に「高性能アンテナ」と言っても、半値角は何度なのか、E-Plane・H-Planeに対しどのように広がっているのか、によってその特性は違ってきます。そして我々人類は地表面付近を主な生活活動の場としているため、垂直面に狭く、水平面に広い指向性のアンテナがよく利用されます。以下、代表的なアンテナの名称と特性、そしてその主な用途について説明してゆきます。