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ニッチ市場ではない“マス市場”

 中国で成功している企業の1つの特徴といえるのが、市場規模が非常に大きな商品を持っていることだ。例えば、MediaTek社の携帯電話/スマホ向けのLSIチップセット・ソリューション、Huawei Technologies社の電子通信交換機、BYD社の2次電池、Lenovo社のパソコン、小米のスマートフォン、動画サイト運営会社の中国Leshi Internet Information & Technology(楽視網)のテレビ、Tencent Holdings社の交流サイト(SNSサイト)「Tencent QQ」(以下、QQ)と無料通信サービス「WeChat(微信)」、中国国有通信機器大手のDatang Telecom Technology & Industry Group(大唐電信集団)の無線通信方式「TD-SCDMA」などだ〔QQについては本コラムの「中国のFacebookとは?(下)」、WeChatについては「LINE最大のライバルWeChat」を参照〕。

 しかも、成功企業の場合は、競合他社と同じような商品を手掛けるにしても、どのユーザーを対象とするかの目の付けどころが違う。これも重要なポイントだ。例えば、インタネットのインスタント・メッセージ(IM)サービスが流行したとき、北京や上海など大都市のホワイトカラーは、米Microsoft社のポータルサイト「MSN(Microsoft Service Network)」が提供する同サービスを使っていた。しかし、収入がそれほど高くない内陸や地方の普通の人々は、当時流行していた海外版のIMサービスを真似して始まったTencent Holdings社のQQを利用していた。そして、最終的に膨大なユーザーを獲得したのは、普通の人々を対象としたQQだった。この成功でTencent Holdings社は中国最大のインタネットサービス企業へと成長。同社が新たに開発した無料通信サービスのWeChatでは、QQで蓄積したユーザー群と技術力を武器に、中国国内のみならず世界へと挑んでいる。

 同様に、Huawei Technologies社の電子通信交換機の場合は、競争が激しく海外大手の支配力の強い都市部ではなく、農村市場をターゲットとして成功している。MediaTek社のLSIチップについては、大手ではなく、中国で多数存在する無名の中小携帯電話メーカーを対象とした。大手の競争相手が重視していない、あるいはまだ手が届いていない、それでいてニッチ市場でもない“マス市場”からリソースを投入したのだ。

 そして、もう1つの重要なポイントが、技術的なハードルがある市場を狙うことだ。ここで紹介したIMサービス、電子通信交換機、LSIチップはいずれも誰でも参入できる市場ではない。ある程度の技術的なハードルが存在する。だからこそ、悪質の競争を避けることができるといえる。