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 米国FCCが2002年2月14日に発表した法改正を受け、「革新的な新通信技術UWB」「数百M~数Gビット/秒の高速通信」「壁を超えて通信できる?」「雑音を利用して通信」「もはや周波数割り当てという常識は過去ものに」など、誤解や拡大解釈を含んだニュースが華々しく報道されることになりました。半導体業界ではこの新技術を実用化すべく次々に新企業が名乗りを上げ、標準化に向けての動きが始まることになります。今回はこの標準化と製品化にまつわる騒動と、その終焉について語ってみたいと思います。

インパルス・ラジオの(早すぎる)終焉

 前回「UWB≒インパルス・ラジオ」、すなわち鋭いピークを持つパルス波形を用い、周波数(F-Domain)ではなく時間軸(T-Domain)を用いて情報伝達する方式として解説しました。実際、早期に開発に向けて名乗りを上げたUWBチップ・メーカーは「Time Domain」「Staccato Communications」「Pulse~Link」など、インパルス技術を象徴するキーワードを社名に冠したところが少なくありませんでした。

 ところがFCC Part 15の発表後、インパルス・ラジオは急速に表舞台から消えてゆくことになります。前回も述べたように、純粋なインパルス方式では通信速度の向上が難しいことが理由の一つでした。例えば1Gビット/秒の情報を伝達しようと思えば10億パルス/秒の時間軸情報を処理する必要がありますが、それをDSPで処理しようとすると数ギガ命令/秒の処理能力が必要となり、まっとうな方法では商品としてのコスト・パフォーマンスを実現できません。全ての情報を時間軸で扱うインパルス・ラジオは数学的に単純で美しいモデルなのですが、それを使って高速通信を実現するのは、実際には必ずしも単純でも簡単でもなかったのです。

 もう一つの理由は、FCCの規定が周波数範囲を「3.1G~10.6GHz」に限定したことでした。この周波数範囲は従来の無線通信規格に比べればはるかに広いものの、インパルスが想定する「野放図に広い」スペクトラムに比べれば狭いものです。しかもこの周波数帯は802.11aなどで実用化済みの5GHz帯を挟んでおり、ここは避けて使うべきであろうとの判断がなされ、実用システムとしてのUWB帯域は3.1G~4.9GHzの「ローバンド」と5.8G~10.6GHzの「ハイバンド」に分割されてしまうことになったのです。これは野放図にスペクトラムを占有することが前提のインパルス・ラジオにとっては致命的でした。

割り当て周波数とグループ分割