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 将来を予測できない時代には、終身雇用も事実上、崩れました。個々人が自分の判断で、最適なキャリアを探していくのは、むしろ当然でしょう。企業の採用も随分変わってきました。以前は、電機連合に所属する企業間では、人事部がお互いの社員のリストを共有して転職できないようにしていた、という噂もあったくらい、転職は難しかった。

 でも、今は違います。企業は自らの生き残りのために、日本企業同士でも、優秀な人材を引き抜くようになりました。リストラが相次ぐ半導体業界では、フラッシュメモリで業績が好調な東芝が、ここぞとばかりに、積極的な中途採用を行っているようです。中途採用の募集広告を、関東では南武線や湘南新宿ラインに、関西では大阪モノレールや京都近辺、広島でも・・・と言えば、どの企業のエンジニアを狙っているか、ミエミエですね。

 こうした転職が当たり前になった時代では、今までのように、「転職者は裏切り者」とみなすような、ウエットな感情はそろそろ我慢した方が良いと思います。キーパーソンがライバル企業に引き抜かれたら、複雑な感情を抱くのは仕方のないことで、言うは易しですがね。

 ただ、そうして転職をしたOBの中には、将来また転職する人も出てくるでしょう。外資系企業では転職は頻繁に起こります。引き抜かれた優秀な人材を再び取り戻すチャンスはあるのです。

 外に出て行ったOBは自社とライバル企業の強みも弱点も熟知する貴重な人材、知恵の宝庫なのです。引き抜かれた側には、色々な思いはあるでしょうが、それはグッと我慢して、OBを自社に呼び戻す、引き抜きを仕返す、くらいの懐の深さが、これからの日本企業には必要ではないでしょうか。

 話を戻して、フラッシュメモリ。東芝に残って頑張っておられる方と、外に飛び出した方がコミュニティとしても分断されていて、本当にもったいないと感じます。私は大学という中立的な立場にいるため、幸いどちらのコミュニティともお付き合いできていますが、何としても両者をつなげたいと思うのです。

 会社を飛び出して外で新しい経験をした方の知見は大変貴重です。また、ライバル企業に移った方も、辞めた時の事情は色々でしょうが、時がたつとやがては古巣にもう一度貢献したい、という思いを持っている方も多いのではないでしょうか。

 現在の日本企業では人材を引き抜かれる一方になりがちで、とても残念です。菊池寛著の「恩讐の彼方に」ではないですが、過去のことや複雑な感情はある時点で精算して、日本企業もOBを上手く活用できるようになれば良いのに、と願ってやみません。