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 ここ数カ月、専門書籍の編集にかかりきりでした。毎年11月に発行している「半導体技術年鑑」に加え、今年は日経BP未来研究所と共同で企画した「メガトレンド 半導体2014-2023」の刊行を12月中旬に予定しているためです。前者が半導体技術動向の解説書であるのに対し、後者は半導体の未来を予測する内容になっています。

 半導体2014-2023の執筆・監修を務めた国際技術ジャーナリストの津田建二氏は、社会的なトレンドや人間の願望を理解することが次世代の半導体開発に欠かせないと述べています。ユーザーの要求に従って半導体を設計・製造する時代から、ユーザーが数年後にほしい半導体をイメージして提案する時代に業界全体が変わりつつあるからです。ユーザーでさえ明確にイメージできていない要求を先取りするためには、半導体開発者に未来を思い描く“想像力”が必要になります。

 そのときに重要になるのが、社会的なトレンドをしっかりとつかみ、人間の自然な願望を理解することだと津田氏は指摘しています。具体的には、新興国の経済成長とIT/クラウドの拡大というトレンドを押さえた上で、「安心・安全・健康・長寿・快適」といった人々の要望に応えることが重要になります。

 逆に、シーズ志向で新しい動作原理のデバイスなどを開発しても、それだけでは成功は難しいのではないかと津田氏は述べています。これは「iPhone」を思い出すと分かりやすいかもしれません。iPhoneが登場した時、多くの技術者は「新しい技術は何もない」と評しました。しかし、スワイプやピンチイン/アウトといった操作方法を取り入れ、“ユーザーを楽しませる”という特徴を持たせたことが、その後のAndroidスマホなどへの大きな流れを作り出しました。「使っていて楽しい」という人々の自然な要望に応えたことが重要だったのです。

 トレンドを軽視することの危険性は、日本の半導体メーカーが経験済みです。1980年代、日本の半導体メーカーはメインフレーム向けの高品質DRAMで世界トップの座に上り詰めました。その後、コンピュータのダウンサイジングというメガトレンドを軽視した結果、大敗しました。韓国Samsung Electronics社が安いDRAMを出しても、人件費の安い国だからと言い訳しました。米Micron Technology社が安価なDRAMを出して初めて「マイクロン・ショック」という言葉が生まれます。「それでも現場の技術者はMicron社ほどの少ないマスク数では良いものは作れないだろうと低価格化のインパクトにしばらく気付かなかった」(津田氏)といいます。

 今、日本では半導体工場の売却や閉鎖が相次ぎ、半導体は斜陽産業のように扱われています。しかし、世界に目を向けると半導体市場は成長し続けており、日本だけが停滞している特殊な状況にあります。何とかして半導体ビジネスを成功させたいと考える志の高い企業は少なくないでしょう。そうした企業を応援したいと考え、今回の書籍を作りました。著者である津田氏のブログ「NEWS & CHIPS」にも、熱い思いが語られています。また、日経エレクトロニクスの2014年1月6日号で今回の書籍のエッセンスをまとめた津田氏の寄稿を掲載しますので、ぜひご一読いただければと思います。