PR

交換機と搬送装置の生産も21世紀には急減

 通信機器の代表的存在である交換機と搬送装置、その生産金額は、1990年代後半から急減している(図6)。インターネットの影響と考えられる。

図6 交換機と搬送装置の生産金額推移
資料:経済産業省機械統計
[画像のクリックで拡大表示]

 交換機と搬送装置はいずれも、ピーク時の生産金額は9000億円に達している。また1985年以後も1990年代の後半まで、生産が大きく伸びていた。交換と伝送のデジタル化、すなわちISDNへの投資が盛んだったことを意味するだろう。ところが2000年代には生産が急減、わずか数年で3分の1以下に落ちてしまった。

 ISDNは実質的には短命だった。2000年ごろから加入者が減少している。インターネット接続のための高速・常時接続・定額料金の回線の需要が急増したからである。「ADSL (asymmetric digital subscriber line) 」や「光ファイバ回線」などのブロードバンド接続が、この需要に応える。

 インターネットはいまや、あらゆる人間活動の基盤である。そのインパクトは極めて大きい。しかし本連載は、その全体像を述べる場ではない。ご関心のある読者は、近く刊行予定の『電子情報通信と産業』(西村吉雄著、コロナ社、2014年)などを参照していただきたい。ここでは交換機などの通信機器に大きな影響を与えたパケット交換について触れておく。

インターネットの通信方式(パケット交換)では交換機が不要

 インターネットはパケット交換と呼ぶ通信方式を採用している。電話交換機の基本は、発信者と受信者の電話機を線でつなぐことである。ところがパケット交換方式では、線で物理的につなぐ必要はない。つまり交換機は要らない。

 図6に見たように、交換機の国内生産は1990年代の終わりごろから激減する。その時期はインターネットの普及期と同じころである。また固定電話加入数は減少を続け、携帯電話とインターネット電話の加入者は増えている (図3)。NTTは、東日本・西日本とも、固定電話網の基幹部分を、交換機方式からインターネット方式に、2025年までに切り替えると発表している[「PSTNのマイグレーションについて」、NTT西日本・東日本の共同ニュスリリース、2010年11月2日]。

 インターネットでは、例えば電話の音声信号をデジタル化し、そのビットの連なりを決まったビット数のパケット (小包) に小分けする。パケットには宛先 (電話なら受信者の電話番号に相当) と、分けたときの順番を付けておく。これらのパケットは、空いている伝送路に順次、送り出される。

 各パケットは伝送路を通って中継地に着き、ここで行き先を確かめられ、空いている伝送路を探して次の中継地に送り出される。これを繰り返して宛先に着く。宛先 (受信端)では、違う経路を通って次々に到着するパケットを、発信時と同じ順番に並べ直し、電話なら音声信号にして再生する。

 パケットの受け渡し作業は、すべてコンピュータ(ルーター)が行う。通話中であっても、電話機同士が電気的に接続されることはない。従って通話中に通信線を専有しない。どこかが故障しても、迂回して空いている伝送路を探せばいい。だから災害などでネットワークの一部が壊れても、全体は機能し続ける。この点、交換機網は、中央の交換機が破壊されると、全体が機能しなくなる。

 しかし一方、交換機網では、通話中の電気的接続が保証される。その意味で通話品質は高い。これに対してパケット通信では、同じ伝送路を複数のパケットが同時に使おうとして、パケットの衝突が起こることがある。そういうときは、しばらくしてから送り直す。空いている伝送路がなかなか見つからず、遅れてしまうパケットもある。「できるだけのことはするが、保証はしない」。このベスト・エフォートの考え方に、パケット交換は立脚している。この点に伝統的通信会社(AT&T社やNTT)は不信感をいだき、パケット交換の採用には消極的だった。