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 今回は Bluetooth 編の締めくくりとして、無線LAN(Wi-Fi)とBluetoothの共存問題について解説してみます。

 Wi-Fi(2.4GHz)とBluetoothは同じ周波数帯域を使います。なので両者が同時に稼動すると干渉が発生することを避けられません。両者が同じ室内で稼動する程度であれば「ある程度」の干渉で済むのですが、携帯電話機のように小型機器にWi-FiとBluetoothを実装するシステムでは深刻な影響が出ます。小型機器では実装面積が足りず、Wi-FiとBluetoothのアンテナが隣接することを避けがたい(場合によっては共用アンテナを使うこともある)ため、干渉の影響が桁違いに大きくなるためです。

 同じ「2.4GHz ISMバンド」といっても、Wi-FiとBluetoothは周波数の使い方が大きく異なります。図1に示すのは典型的なWi-FiとBluetoothの周波数スペクトラムですが、OFDM方式のWi-Fiが固定されたチャンネルを埋め尽くして使う(この場合はch=6、中央周波数が2.437MHz、占有周波数幅が22MHz)のに対し、FH(周波数ホッピング)方式の Bluetoothは瞬間的に占有するスペクトラムは1MHz だけで、これが約 80MHz 幅の範囲に割り当てられた 79 チャネルの間をランダムに飛びまわるという動作をします。

図1 Wi-FiとBluetoothのスペクトラム

このため、Wi-FiとBluetoothの電波が衝突すると

Wi-Fiから見た場合:チャネル内にBluetoothの電波が入ると、一部のサブキャリアが崩れる。

Bluetoothから見た場合:ホッピング通信している中でWi-Fiのチャネルと衝突したフレ-ムが消える。

という影響が出ます。電波の強さも両者で異なっており、一般的な Wi-Fiシステムが送信出力 15dBm(30mW)前後なのに対し、Bluetooth Class 2は4dBm (2.5mW) 以下です。つまり一般的には、Wi-FiとBluetoothがぶつかるとBluetoothが負けることが多いのです。

 Wi-FiとBluetoothがぶつかると、Wi-Fiの受信機はパケット損失を検出し、送信レートを落とす(シンボル冗長度を上げ、変調精度を下げる)ため性能微減、Bluetoothは損失したパケットをタイムアウトで検出し再送する(このときFHによって以前衝突したのとは違う周波数で再送される確率が高い)ので性能大減というような影響となって現われます注1)。

注1) シンボル冗長化や OFDM サブキャリアの変調については、次回からのシリーズで解説する予定です。

AFH

 Wi-FiとBluetoothの共存問題は両者が登場した90年代から問題視されており、Bluetooth 1.2において干渉を軽減する技術AFHが導入されました。AFHとはAdaptive Frequency Hoppingの略で、Bluetoothパケット消失が頻発するチャネルを検出し、そこを使わないように「飛ばして使う」ようマスタ・スレーブ間でネゴシエ-トすることで「Wi-Fiの占有チャネルを回避したホッピング・パタ-ン」を適応的(Adaptive)に作り出すという技術です。いわば、喧嘩しても勝てない相手に道を譲るような形ですね。

図2 AFHによる周波数の住み分け例

 AFHの動作は全自動で、何も設定する必要がありません。マスタとスレーブはお互いの情報を交換し、互いにAFH対応であることを確認し、以降はマスタが音頭を取ってAFHマスクを設定します。

 AFHはBluetoothとWi-Fiのアンテナ間にある程度のセパレーション(理想的には 40dB 以上)があればかなり有効に働きます。しかしアンテナ・セパレーションが低い場合、特にBluetoothとWi-Fiでアンテナを共有する場合は、AFH で周波数を避けるだけでは回避しきれないパタ-ンが生じます。