「ななつ星in九州」(JR九州)の車両

――「ななつ星in九州」の企画の意図は、どのようなものでしょうか。

水戸岡氏:企画の出発点は、今まで体験できなかった九州を改めて知る、九州の観光地、人、文化と、今まで一通り皆さん何となく見て聞いているところを、改めてもう一度深く知る旅と出会いを提供できたらいいね、ということでした。これがやり始めるとさっぱり分からなくて、それは「豪華列車の旅」とか口では言っても実際に豪華列車の旅をしたことがないからです。もともと、オリエントエクスプレスは欧州でも上流の方が使う車両で、私たちは上流階級の生活や文化を知らないので、ただ映画とかテレビとか本とか雑誌とか、そういうものを読んだ中で勝手に想像して、何度も右往左往しながら、分からない中で一生懸命に試行錯誤しながら作業を進めてきました。最終的には2013年10月15日に走り始めることができました。

 不安に駆られながらの仕事でしたが、私はもう66歳になっておりまして、10代からデザインを志して、40年以上デザインの世界で生きてきて、その間に経験して培ってきたさまざまなことを総動員して、それがあって初めてこの車両ができたんだろうなっていう気がしました。私だけでなく、うちの事務所の若い22歳のデザイナーにしても、22年の人生があったからこの車両に出会えたのだと思いましたね。みんなそれぞれが自分の年齢で精一杯全力で仕事をして、感動というか思い出をつくれた仕事でした。もちろん、乗ってくださるお客様のためにいまだかつてないものを提供したと思っていますが、同時に自分たち自身、一緒に仕事をしている仲間にとっても、いまだかつてない仕事を行うことができたと考えています。

 そのときに、利便性や経済性だけではなくて、鉄道の持つ力というか、鉄道に乗ることで得られる心の豊かさ、文化のようなものをいかに多くの人に知ってもらうかを念頭に、手間暇かけて製作に参加した日本の職人たちの英知を絞って作った、というのがななつ星in九州用の車両(77系客車)です。