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 「ヘルスケア」に特化した機器開発の現況が書かれている書籍『パーソナル・ヘルスケア』(NTS社、2013年10月23日刊)が発行された。これまで個別に扱われていたセンサ関連のテーマを、ひとまとめにした総集編的な意味を持つ。

全国の研究機関で取り組んでいるセンシング技術を網羅

 日本全国の大学や研究機関を主体とした執筆陣は、52名におよぶ。タイトルに「パーソナル」という用語を含んでいることで、病院などで使用されている医療機器とは一線を画すという意味を含んでいる。いわば、家庭や介護施設などで使われる機器を想定し、これまでの技術をより使いやすくする、というイメージがある。

 そのためのキーワードを羅列するなら、「非接触・非拘束」「ウエアラブル」「スマートフォン対応」…。実は、これらが一つひとつの章として束ねられ、それぞれのセンサ技術の開発状況が類別的に示されている。つまり、健康管理や増進、あるいは病気予防など「ヘルスケア」と呼ばれる領域の機器はどういう方向に向かっているのか、という状況説明と受け止めてもらえればよい。

 とはいえ、その基となっているのは、現在の医療機器であり、その延長線上での開発となる。たとえば心電図、血圧などの汎用技術も含まれるが、それをいかに非接触、ウエアラブル、パーソナル化するかという現実的なテーマもある。もちろん、これまでにない新しいパラメータである血糖値やウロダイナミクス、唾液ホルモン、ストレスといった新しい研究も含まれている。

 一口に表現するなら、現在から未来に向けてのヘルスケア機器に応用される「センシング技術一覧」とでも表現すれば適当だろう。

事業化に向けた積極的な取り組みが必要

 さすがに、370ページにもおよぶ大冊だけあって、センシング可能なパラメータの大部分を包含している。とはいえ、研究機関での記述が多く、メーカーでの商品化に向けた取り組みについてはほとんど触れられていない。

 一番の課題は、こうした研究・開発状況が公にされる機会があっても、商品として販売される可能性が低いことだ。どんなに優れた研究であっても、それだけで収束してしまっては意味がなく、事業化することによって初めて価値が見いだされる。役に立たない技術研究だけやっていても、時間と金の無駄使いということにもなりかねない。これほど多彩な日本の基礎技術は、早く意味のある製品に仕上げてもらいたいと願っている。

 そこで、一つ提案がある。ヘルスケアの領域なので、医工連携よりも研究機関とメーカーの結び付きが重要だ。つまり、意義のある“工工連携”を提案したい。これほど多くの優れた技術は早く商品化したいからだ。それに必要なメーカー側のノウハウの提供が強く求められる。

 ここに書かれている多くの技術開発案件は、金の卵にも匹敵する。それを孵化させ、親鳥に仕立て上げるために、多くのメーカーがすすんで協力してもらいたい。この本は、そういうことを物語っているように思えてならない。