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 前回のコラムでは、生体情報モニタを主題にしたワイヤレス化の動向を述べた。まさにこの流れに沿う、新たな技術を取り入れたモニタをPhilips社が発売した。まず、その特徴などについて触れておきたい。

生体情報モニタとICTの融合

 フィリップスエレクトロニクスジャパンは2013年5月20日付で、新しい概念を吹き込んだ生体情報モニタ「Intellivue MX40」の販売を開始した。何が斬新かと問われれば、生体情報モニタという製品が、いよいよ時代の先端をゆくICTと融合しだしたということだろう。

 端的に表現するなら、生体情報モニタが「スマホ」になったといえるかもしれない。言ってみれば、Intellivue MX40は2.4GHz帯などの汎用の周波数帯を最大限利用し、院内だけにとどまらない汎用化への道を開いたともいえよう。

宮田喜一郎

 右の写真がIntellivue MX40で、心電図やSpO2の送信機能を備え、モニタ本体はスマートフォンのような大きさである。

 これまで生体情報モニタの分野では、同社はかたくななまでに有線タイプのモニタを保守し続け、世界のシェアを確保してきた。これまでの姿勢をみれば、日本のメーカーとの考え方とは一線を画し、「バイタルサインを確実に伝達する方法は有線方式だ」という確固たる信念さえ見せてきた。

 だが、時代はこの姿勢を貫くことがベストなものでないことを教えつつある。

融合がもたらすものは何か?

 Philips社のWebサイトには、「Intellivue to go(インテリビュー前進)」と名付けられた資料が掲載されている。副題として、「IntelliVue MX40 wearable patient monitor」が掲げられ、ワイヤレス化、小型化による可搬型の生体情報モニタ誕生を告げている。

 半世紀も前、初めて生体情報モニタを発想したころの感覚からすれば、「やっとここまで来たか」というのが率直な感想だ。当時、数百kgもあるポリグラフを手術室に持ち込めないという不便さから、「ベッドサイドモニタMBM-40」という初号機を作りあげた。それでも数十kgの重さがあったから、搬送用のカートが付随していた。

 今や、IntelliVue MX40は医療スタッフの掌中におさまり、必要とあらば、ナース・ステーショはもとより、世界中の関連施設にもオンラインでの情報伝送が可能となる。

 かつて、手術室やICUといった重症患者を対象としていたモニタは、ここまでくれば、一般病棟のみならず、在宅医療や福祉・介護施設への展開も容易になる。ICT技術との融合という意味は、単なる小型化とかワイヤレス化だけのことではない。いうなれば、モニタの活動範囲を飛躍的に広げる可能性を秘めていることになる。

この進化は、どこまで

 生体情報モニタの進化は、どこまでも続く。

 偶然にも、前回のコラムで日本の医療用テレメトリーの「開発ラグ」を危惧したばかり。もちろん、こうなるだろうとの予測の上で書いた記事だ。とはいえ、その証左ともいうべき現実が、もうここにある。いまさら、400MHz帯の双方向化を検討している段階ではあるまい。

 とはいえ、このIntelliVue MX40でさえ、まだ試作的・試技的な状況が垣間見える。見直すべき課題は幾つもあると思われる。担当者には、これに満足することなく、さらなる展開を考えてほしい。一例を挙げるなら、センサ部と表示部の分離によるワイヤレス化のメリットの増大、といった課題だ。

 IntelliVue MX40の年間出荷目標台数を聞くと、500台ほどだという。これだけでは判断が難しいが、これまでの生体情報モニタの延長線上だけで考えているように思えてならない。

 未来の新規分野までもカバーできそうな製品なら、価格面、販売面をも含めた総合的な企業戦略、産業戦略がほしい。生体情報モニタの貢献度はさらに広がり続ける可能性が大きいからだ。