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 これまで数回にわたり、生体モニタや健康関連機器についてのワイヤレス化の状況を断片的に述べてきた。今回は、これらの機器についての現況や動向を俯瞰しながら、将来への展開について追記し、この分野での商品展開を予測してみたい。

パラメータによりワイヤレス化のメリットが異なる

 まずは、以下に示す表を見ていただきたい。現時点におけるワイヤレス化の進行状況を測定パラメータ別に表現してある。

コラム
パラメータ別のワイヤレス化の現況(表:著者が作成)

 開発の歴史からしても、心電図の重要度は抜群であり、これを超えそうなパラメータは見つからない。長期間、多くの技術がつぎ込まれてきたにもかかわらず、意外な開発ポイントが抜けていることもある。心電図の測定技術など「既存のもの」と考えていると大間違い。測定のための「基線安定化」というような基本的な課題さえ、開発途上のものも存在する。

 しかし、ワイヤレス化によって心電図モニタはウエアラブル、ポータブル、テレメトリーという至便性を備え、近年の小型化・省エネルギー化がさらにそのメリットを増大させた。ワイヤレス・モニタといえば、心電図モニタの代名詞になっているほどの存在でもある。

 生体情報モニタについて測定パラメータ別で議論するなら、パルス・オキシメトリーのシェアが心電図のそれより多くなった。とはいえ、ワイヤレス化の視点からすると、その割合は低い。本来なら、ウエアラブルでワイヤレス化されたパルス・オキシメータが普及しそうであるが、一つだけ障壁が存在する。パルス・オキシメータのセンサは赤色光および赤外光を発するLEDが組み込まれている「能動型」のため、駆動用の電力を必要とする。それゆえに、送信機側が省エネルギーというわけにいかない難点を抱えている。将来、この点を解決する手段が可能となれば、パルス・オキシメータのワイヤレス化は加速度的に進行するはずだ。

 非観血の血圧測定については、カフを用いている限り測定部そのもののサイズやエネルギー消費が大きすぎる。したがって、ワイヤレス化の意義という面からも大きなバリアが存在する。

ニーズに合わせた展開が必要だが…

 医療機器、介護機器、健康機器などいわゆるヘルスケア領域に属する商品群を生産しているメーカにとって、ワイヤレス化とどう立ち向かうかは、緊急かつ最重要課題といえる。スマートフォンとは別領域と考えたらとんでもないことになる。

 それではどうするか、というテーマに面と向かう必要がある。避けて通れないというより、今や王道とも言うべきメイン・ロードを走る以外にはなさそうだ。

 かといって、魔法のような手があるわけではない。地道に、今後のニーズを探ることから始めるべきだろう。だが、ここで勘違いしないように言っておきたい。「ニーズ」は黙って待っていては近寄ってこないので、シーズ側からの提案も大切となる。なぜなら、商品化の根本原理でもあるように、最初から理想的な製品など期待するほうがおかしい。

 本題に戻そう。ワイヤレス化の商品化がどうなるかは、ひとえに現在の技術の延長線上にあるだろう。前出の表でいうなら、市場性についての線の太さは、ニーズ側からだけでなく、シーズ側での考え方次第で今後の動向が大きく変動することもありうる。

 最近の健康機器で注目されるのが歩数計である。健康ブームに乗っていることが一つの理由だ。とはいえ、単にそれだけの理由では済まされない点に注目しておく必要がある。当初、歩数計として出発したが、今や、活動量や歩行速度なども演算可能なユーザーの利用価値を引き出せる製品に成長した。それに加えて、ワイヤレス化によるスマートフォンとの組み合わせという大きな付加価値も加わった。

 歩数計の一例だけでは言い尽くしがたいが、ワイヤレス化による商品価値の拡張は、将来への大いなる希望を抱くに余りある。

 現時点に限定すれば、医療機器・健康機器のワイヤレス技術は、日本が欧米に対してリードしている位置付けにある。しかし、ここで立ち止まっていたら、諸外国の追い上げにあうことが目に見えている。我が国独自の、世界に誇れるワイヤレス化商品の登場を期待したい。