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 前回のコラムでは、2012年10月にFCC(連邦通信委員会)が発効したMBAN(医療用生体信号領域通信網)についての近況を報告した。今回は、その具体例を示すことを目的として、米国における生体情報モニタの動向に焦点を当てたい。

新製品発表に見るPhilipsの狙い

 MBANに対するFCCの周波数割り当ては、生体情報モニタの主要メーカーであるオランダRoyal Philips Electronics社および米GE Healthcare社の2社からの要望に対する対応と受け止められている。

 この中で、実際にPhilips社が製品化したワイヤレス・モジュールについて紹介する。以下の写真は、フィリップス エレクトロニクス ジャパンが2012年9月に発表した「IntelliVewケーブルレスSpO2ポッド」および「IntelliVewケーブルレスNiBPポッド」である。

philips
左が、IntelliVewケーブルレスSpO2ポッド、右がIntelliVewケーブルレスNiBPポッド

 ケーブルレス化すなわちワイヤレス化の最大の意図は、クリティカルケア領域における患者のスパゲティー・シンドロームからの解放だ。それに加え、患者が歩行可能な状態に回復すれば、これらのモジュールを装着したまま離床することが可能となる。いわゆる、センサ類の「ウエアラブル化」をも目途としている。

 また、患者周りの安全性の向上や取扱いの簡易性、さらには、ケーブルレスによる感染を低減する目標設定も加えられている。

 同社のプレス・リリースによれば、日本においても両機種合わせて年間500台の売り上げ目標を設定している。上記のメリットを全面的にアピールし、生体情報モニタ全体の売り上げ増に寄与できる、との目論見だ。

ワイヤレス化による展望と課題

 これまでの生体情報モニタは、心電図を中心としたモニタリングが行われてきた。ところが最近になって、パルス・オキシメトリーの有用性が認識され、心電図よりも簡単にモニタでき、かつ有用との認識が高まりつつある。

 Philips社が心電図ではなくパルス・オキシメトリーを優先的にワイヤレス化した理由はこの辺にあるのではないか、と推測される。筆者は、元来、両者の比較論を提示し続けており、2004年に出版した著書にもこの傾向を記述している。

*『生体情報モニタ開発史』、久保田博南著、真興交易 医書出版部、2004年12月

 ただし、今回はNiBP(非観血血圧計)もワイヤレス化したことを考えると、この論点からはややずれる。同社ではこれ以外のパラメータに関しても継続的に商品化していくと見られるが、次期製品について何をターゲットにするのか、その発表を待ちたいところだ。

 いずれにせよ、FCCやこの分野でのライバル会社と目されるGE Healthcare社も巻き込んでの生体情報モニタのワイヤレス化、ウエアラブル化の商品戦略には大いなる期待が膨らむ。一方で、パルス・オキシメトリーと非観血血圧計を対象としたワイヤレス化商品の試行は世界的にも初めてであり、果たして結果がついてくるのかという心配も残る。今後、市場からのフィードバックがどういう結果をもたらすのか、極めて興味深いものがある。