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 最近のITあるいはICTの広がりは、医療機器産業界にとっても例外ということにはならない。というより、医療はそれらの中心的かつ重要なプレイ・ゾーンの一つともいえる。

 2012年5月、米国のFCC(連邦通信委員会)は、生体情報モニタなどのワイヤレス化を目途としたネットワーク用に専用の周波数帯域を割り当てることを公表し、同年10月に発効した。

ベッド周りの通信網確保

 MBAN(Medical Body Area Network, 医療用生体信号領域通信網)は患者周りの近距離ネットワークを意味し、とくにワイヤレス化による伝達手段が選択される。近年では、ことさらワイヤレス化に力点が移り、生体情報を確実に伝達するべき重要度の高いシステムとして位置付けられている。

 現在社会は、医療現場においてさえも、電磁波が錯綜する環境下におかれている。たとえ、緊急度・重要度を要するクリティカルケア領域や、周産期管理下での医療現場でも、電磁波の利用頻度が増大しているからだ。

 手術中、救急処置中などにおいては、患者回りのケーブル類も多種類におよび、いわゆる「スパゲティ・シンドローム」とも呼ばれる好ましくない状況を呈している。この問題点を低減するための手段として有用なのが生体情報モニタなどのワイヤレス化だ。

 心電図・パルスオキシメトリー・体温などのバイタルサインのモニタリングは、クリティカルケアなどでの必須の機能である。

 そこで、生体情報の正確・確実な伝達が要望される環境下では、利用可能な周波数を割り当てる施策が必要となる。MBANは、こうした医療側からの要求に対して一つの対応策として提案された。ワイヤレスであろうと確実な信号伝達手段でかつ信頼性の高いシステムであることが必要だ。現代の医療環境においては、MBANは必然的に求められる重要性の高い考え方といえる。

米国の積極的取り組みが鮮明に

 米国のFCCが打ち出したMBANに関しての専用周波数は、2.4G帯のすぐ下の帯域に当たる2.36~2.4GHzだ。下図には、我が国の現状とMBANとの対比を示した。

宮田喜一郎

 最近の電波の利用状況を見るにつけ、2.4G帯域の重要度に関しては疑問を差し挟む余地がない。我が国においても、アマチュア、無線LAN、産業科学医療用(ISM)など、多目的型の周波数帯域として利用されている。このうち、医療機器に利用されているのは産業科学医療用だが、あくまで他との併用領域であることに注意しておく必要がある。

 一方、FCCが割り当てた2.36~2.4GHzは、MBANという重要度の高い信号伝達手段を目途に限定的に設定された。特徴的なのは、2.4G帯に近接しているため、ハード・ソフトともに現有の技術が微調整で応用できることだ。しかも、MBANという必須の通信網に対して独占周波数を付与する、という「世界に先駆けての重大決心」に読み取れる。

 FCCの施策は、我が国でのISMバンドのように他目的との併用周波数帯域として「使ってもよい」という姿勢ではない。それより、専用周波数として「積極的な利用」を推し進める方策と受け止められる。人体近傍のネットワークは必要欠くべからざるものであり、そのためには、「特別に必要な周波数帯域を配備する」、という決意なのだ。