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古くて新しい技術が開花期に

 さらに大きな枠組みでいえば、ジェスチャー入力技術は「NUI(natural user interface)」と呼ばれる技術群の一分野だ。身振り・手振りに加え、音声や視線、脳波など、さまざまなセンサーで取得した入力データを組み合わせて、UIの入力操作を実現する。より直感的に分かりやすい操作性のUIを目指した開発競争が世界的に活発になっている。

デンマークのThe Eye Tribe社が「2014 International CES」に出展したスマートフォン向け視線入力センサー装置。スマートフォンの右側にあるのが同装置
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 ジェスチャー入力をはじめとするNUI技術は、長らく研究開発が続けられながらも、利用が広がらない技術の代表例だった。いわば古くて新しい技術である。それが表舞台で光を浴び始めるようになるキッカケは、大きく二つの技術がヒットしたことだった。

 一つは、今やスマートフォンやタブレット端末で当たり前になったマルチタッチ操作だ。2本の指を使って写真や地図を縮小拡大したり、紙のページをめくるように画面表示を遷移させたりするUI技術である。米Apple社がスマートフォンなどに採用して以来、ほとんどすべてのモバイル端末が標準で備える機能になった。マルチタッチ操作の普及は、ユーザーの行為に対する機器側の反応の工夫で、UIの操作性を格段に高められることを多くの開発者に気付かせた。

 もう一つの契機は、大ヒットを飛ばしたジェスチャー入力技術の登場である。米Microsoft社が開発したモーション入力装置「Kinect」だ。家庭用ゲーム機向けに開発されたこの装置は、発売から1年強で1800万台を超えるほどの人気商品になった。これらの技術がキッカケとなり、「UI技術を制する者はビジネスを制する」という認識が醸成された。ユーザー体験を向上させる要素技術として関心が高まったことが、ジェスチャー入力をはじめとするNUI技術に開発リソースが集まる大きな理由になっている。

 ジェスチャー入力をはじめとするNUI技術の提案が相次ぐ大きな背景には、身振り・手振りや視線などを検出するために必要な要素部品の性能向上や小型化、価格低下もある。例えば、CMOSイメージセンサーや加速度センサーといった部品は、この2~3年のスマートフォンやタブレット端末の普及で一気に価格が下がった。これにより、小型の検出装置を安価に実現しやすくなっている。

 実際、2014年1月7~10日に開催された「2014 International CES」では、100米ドルを下回る価格で入手できる視線入力センサー装置が続々と登場している。赤外線LEDの光をユーザーの目に向けて照射し、瞳孔からの反射光を受光素子で検出して視線の向きを推定する技術である。従来は、数百米ドルと高価だった製品の価格低下が一気に進んだ。