PR

 「食べ物屋かと勘違いして入ってくるお客様が、とても多いんです」――。

 その“店”の主、河村吉章氏は、嬉しそうに話した。

 ここは、観光地としても名高い横浜みなとみらい。その目印とも言える時計機能を備えた大観覧車「コスモクロック21」のすぐ近く、「横浜ワールドポーターズ」の6階に、河村氏が取り仕切る“店”はある。

k1
その“店”の外観(左)と河村氏(右)
横浜ワールドポーターズの6階にある。

 “店”の内装は、何やら昔懐かしい雰囲気を醸しだすゴージャスな作り。テーマは「大正ロマン」といったところだろうか。窓から望むみなとみらいの景色も、また心地良い。まるで、小粋な喫茶店のようだ。

k2
内部の様子
レトロな雰囲気が漂う。

 筆者がこの“店”を訪れたのは、「閉店後」の17時。人気がなく、ひっそりとしていた。しかし、9時30分から16時までの「開店中」には、この空間は30人以上の高齢者でにぎわっているという。

----------------

 この“店”は、要介護認定を受けた高齢者が利用する通所介護施設(デイサービスセンター)「かいかや」である。同社 代表取締役社長の河村氏は、この施設のコンセプトを次のように語る。

「既存の介護施設の多くは街外れにあり、内装もチープでジャージや寝巻き…。実態は(介護認定を受けた高齢者の)家族の時間を作るための場所でしかなく、高齢者本人のための施設とは言い難い。もっと、高齢者がワクワクできる『お出かけの場所』を作りたかった。そのために、立地や空間演出にもこだわった」。

 実際、利用する高齢者の中には「この“店”にふさわしい格好を」ということで、タキシードなどの正装で訪れる人もいるという。

 この施設の特徴は、それだけではない。レトロな雰囲気で統一された施設内の一角に、少し場違いにも見えるカラフルなゲーム機が数台置かれている。これが、かいかやのもう一つの“ウリ”である。高齢者の心身の活性化のために、ゲーム機を活用しているのだ。

k3
施設内に置かれたゲーム機
ここだけ異質な雰囲気だ。

 実際、施設に導入しているゲーム機を高齢者が利用することで「転倒予防」や「脳機能の活性化」などにつながることが、医療機関によって検証されているという。「ゲーム機があるという理由で、この施設を選ぶ利用者が増えている」(河村氏)としており、利用者の評判も上々だ。

 実は、かいかやは、バンダイナムコホールディングスが100%出資している。つまり、ゲーム会社が運営する介護施設なのである。社長の河村氏も、ナムコ出身だ。「ナムコこそが手掛ける仕事だと思っていた。これからは、ゲーム機になじんだ世代の高齢者が増えてくる。こうした施設のニーズは、いっそう高まっていくだろう」と河村氏は語る。

 日本では2050年に高齢化率(65歳以上の割合)が40%に迫り、世界に先駆けて超高齢化社会を迎える。団塊の世代が高齢化を迎えつつある今、高齢者の社会参加・生きがい・健康管理(見守り)といったテーマの重要性が叫ばれている。同時に、そこに大きなマーケットを見込む見方も少なくない。

 今後、ゲーム機になじんだ世代の高齢者が増えていくと河村氏が指摘するのと同様に、デジタル家電/ITツールになじんできた高齢者も増えてくる。「超高齢化社会に対してテクノロジーが担うべき役割は決して少なくない」――。いつの間にか夜景の街へと変わったみなとみらいを歩きながら、筆者はその思いを新たにした。