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「スマートウオッチ」市場のうねりを創出

 クラウドファンディングが大きな関心を集めるキッカケになったのは、2012年5月にKickstarterで巨額の資金を集めるプロジェクトの事例が現れたことだ。スマートフォンと連動する腕時計型端末(スマートウオッチ)の「Pebble」が1026万6845米ドル(当時の為替レートで約8億円)を集めた。資金を出した人数は、実に6万8929人である。

 この事例が象徴として語られる理由は、巨額の資金調達だけではない。多くの出資者を集めたことから、業界関係者にスマートウオッチの市場性を認識させることにもつながった。この1年で数多くのベンチャー企業がスマートウオッチを製品化し、その動きは大手企業にも波及した。ソニーや韓国Samsung Electronics社などが、この分野に参入するに至っている。

米Pebble Technology社がCES 2014で公開したスチール製の「Pebble」。同社は、「Mercedes-Benz」ブランドの自動車と連携するスマートウオッチ技術関連でドイツDaimler社と提携した
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 多くのクラウドファンディング・サービスでは、プロジェクトのコンセプトや実現する内容を公開し、それに必要な目標額を定めて一般消費者に広く出資を募る。出資額が目標額に達すれば、サービス運営企業が手数料を差し引いた後にプロジェクトの運営者にその金額が渡る仕組みだ。プロジェクトへの出資額が目標額に達しなければ、手数料なしで資金提供者に全額が戻るのが一般的である。

 資金提供者には、出資額に応じて報酬が渡される。その報酬は大きく3種類に別れる。まず、公開したプロジェクトが事業化されたときに、開発した商品などを手に入れる権利を得る「購入型」。次に、事業収益の一部を得る「投資型」。最後は、純粋な寄付で何も見返りを期待しない「寄付型」である。

 技術系の機器開発の分野では、このうち購入型の活用が主流だ。例えば、前述したiblazrのプロジェクトでは、発売時点の価格よりも安価な33米ドルの出資で黒色の商品を受け取れる。39米ドルであれば、黒色と白色から商品を選べ、47米ドルではデジタルカメラ用の接続アダプタが付く。さらに高額の出資になると、アルミ合金製のiblazrを得ることができるといったように報酬を段階的に設定している。

 興味深いのは、商品を受け取れない「1米ドル以上」という金額設定があることだ。iblazrの場合は、プロジェクト運営者からのニュースレターを受け取れる。ほぼ寄付に近い出資と言えるだろう。資金提供者の多くは商品を受け取れる金額を出資しているが、少ない金額の資金提供者も少なからず存在する。

 消費者動向に詳しいキリン食生活文化研究所の太田恵理子所長は、消費トレンドの将来像を予測したレポート「消費トレンド 2014-2018」(日経BP社、2013年12月)で、クラウドファンディングへの関心の高まりは、社会的な課題を解決する「ソーシャルビジネス」やNPO(非営利組織)に飛び込む若者の増加といった社会の変化と関係があると分析している。