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 「電子立国は、なぜ凋落したか」と題した本連載を、今回でひとまず締めくくりたい。本連載はもともと、『電子情報通信と産業』と題する書籍[西村吉雄著、コロナ社、2014年]との関連で企画された。ただしこの本は、日本の電子産業の衰退を主題としているわけではない。電子情報通信分野の総合的産業史、これが、この本の内容である。記述を日本に限定してはいない。

 けれども日本電子産業の惨憺たる現状を知りながら、『電子情報通信と産業』と題する本が、それに触れないわけにはいかない。本の方では最後のところで限定的に、日本電子産業の衰退について記述した。

 一方このウェブ連載では、その最後の部分を拡充、なるべく最新のデータを取り込んで色刷りのグラフを多用しながら、日本電子産業の衰退の現状と原因を考えてみた。

 最終回の今回は、書籍の歴史記述を踏まえ、また連載第1回を受け、連載各回との多少の重複をいとわずに、長期的視点からの総括を試みる。すなわち現在の日本電子産業を、過去、他地域、他産業と比較する。そのためにまず、日本電子産業の現状を確認しておこう。

ICTの貿易赤字は「天然ガス」並みに

 図1は、日本の電子産業の歩みを単純化したグラフにしたものである。2013年の国内生産金額は約11兆円。ピークの26兆円(2000年)の半分以下だ。

図1 日本電子産業の生産・輸出・輸入・内需・貿易収支の推移
資料:経済産業省機械統計、財務省貿易統計(一部、筆者推定)
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 また同じ2013年、日本電子産業の貿易収支は、ついに赤字に転落した。10兆円近い貿易黒字を出して外貨の稼ぎ頭だった日本電子産業、製品が売れすぎて世界中で貿易摩擦を起こしていた日本電子産業、今やそれは夢まぼろしである。

 とりわけ赤字額が大きいのはコンピュータ関連装置と通信機器である。それぞれ1兆6000億円と2兆円ぐらいの赤字が見込まれる。合計すれば3兆6000億円の貿易赤字である。これは天然ガス輸入増による増加赤字額に匹敵する。日本のICT(情報通信技術)産業は大赤字なのだ。スマートフォンやタブレット端末を喜んで使っているうちに、貿易赤字は天然ガス並みになってしまった。

 ただし2014年初頭の現在、かなりの数の日本の電機電子関連企業が業績を好転させている。2年前の2012年初頭に比べれば「まだまし」と言える状況にはなってきた。

 業績好転の理由の第一は、不採算事業の整理である。整理の対象となったのは、テレビや半導体など、狭義の電子部門だ。電子部門の業績回復ではなく、不調の電子部門を切り捨てることによって、企業としては業績を好転させている。またいわゆるB-to-C(消費者向け)事業を捨て、B-to-B(企業向け)事業に向かっているところが多い。その一環に、部品事業への傾斜がある。

 実は日本の電子産業は部品産業の性格を強めている。電子産業全体に占める電子部品(デバイスを含む)の比率は、生産では6割、輸出では8割に達する(図2)。電子部品の貿易収支は約3兆円の黒字である。だから電子産業全体では、赤字額は5000億円弱で済みそうだ。

図2 日本の電子産業における部品比率の推移
資料:経済産業省機械統計、財務省貿易統計
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 以上の現状、これを確認したうえで、今度は一気に時代を遡ろう。