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 最近のマンションの多くに設置されている宅配ボックスですが、この誕生に至るストーリーは正に「困った」を見つける素晴らしいイノベーションだったのです

 1980年代半ば、運輸・物流環境のめざましい発展の流れの中で登場した「宅配便」が広く一般に普及しました。こうなると集合住宅では、受取人不在で管理人室へ荷物が預けられるケースが急増しました。お中元やお歳暮のシーズンには、集合住宅の管理人室は足の踏み場のないほどの受取人不在荷物で埋め尽くされたといいます。

 当時マンションの管理人をされていたフルタイムシステムの原社長は「管理人の負担がなく、住民が快適に留守中の宅配荷物を受け取る方法はないものか」と考えて、管理人代わりのロッカーを開発しました。晴海の「グッドリビングショー」の展示会に出展し、NHK(日本放送協会)のテレビ番組での紹介を受けて各方面から注目されたのが1984年のことでした。

 彼は1986年にフルタイムシステムを設立し、1987年に日本で最初の宅配ボックス1号機を発売します。この彼が管理人時代に経験した「困った」を解決するために発明し、製品化した宅配ボックスは、企業の「提供価値」と「市場のニーズ」を実現した好例でしょう。それも単なる見えているニーズではなく、潜在的な市場ニーズを掘り起こし、その後の人々の生活スタイルの変化まで起こしてしまった素晴らしいイノベーションだったのです。

 ネット検索サービス、シャワートイレ、タッチパネルを用いたスマートフォンなども素晴らしいイノベーションであり、「提供価値」と「ニーズ」がうまくマッチングしたよい事例ですが、多くの場合ニーズは潜在的であり、なかなか簡単に見つけることはできません。

 このように「困った」を探すことで潜在的ニーズを見つけることは、本当はそれほど難しくはありません。ところが多くの場合、「困った」は無視されたり、見えなかったりしてしまいます。