技術者や技術系企業が陥りやすい問題点が実はここにある。明らかに偏重思考と思われるのが「研究重視」という傾向だろう。日本の技術者個人としても団体としても、基礎研究に没頭しすぎている現状がある。自己主張や自信過剰という悪癖は、医療機器業界にもまかり通っているため、実の本人が気付くことが難しい。
「じっくりと研究基盤を築くことがよい製品を生む秘訣」と勘違いしているのだ。そのために、第1ステップで立ち往生しながら要らぬ努力をし、時間の浪費をしていることさえ自覚できないでいる。
重要ステップの見極め――商品化へのチャレンジ
具体例として、日本がもっとも弱い心臓ペースメーカ産業について考察してみよう。なぜ日本企業は手も足も出ないのか、という普遍的な疑問が発せられ続けて久しい。
かつて、製品が出始めた1960~70年代頃の状況を振り返るなら、国内においても大学の研究者や企業の技術者を含め、数多くの基礎的な研究な続けられたことがある。心臓ペースメーカのリード線や駆動電池の研究だけでも多くの研究があった。
にも関わらず、現況を見る限り、この分野における日本企業の製品実績はほぼゼロと言っていい。強いてあげるなら、部材供給の役割程度といえばよいのか。
この製品は、欧米の商品化戦略に屈してしまった典型的な事例である。この屈辱的な状況を認めつつも、なぜこうなったかを考えておく意義はある。失敗例の中にこそ、往々にして次なるヒット商品を生むべきヒントがあるからだ。
技術屋のエゴを廃せ
基礎研究から始まる発明など、より自己主張のできる仕事への熱心さにおいて、我が国の技術陣の優秀さは他国に劣ることはない。だが、いざ商品化などの実業において、その努力や闘争心がないことを如実に感じることができる。