医療機器全般を見渡してみると、その開発過程の一番重要なステップが「商品化設計」にある。どんな製品たりとも、実用化企画やデザイン設定、生産設計といった内容の業務を通して、戦略的な段階を踏まなければならない。つまりは、ここを最重点施策として再確認することが必要となる。
前回のコラムにおいて、米国をして“事業化職人”と呼んでみた。かなりの分野において、このステップでの集中度が行き渡り、「真の技術」を会得している、と言い切れる。
日本の心臓ペースメーカの失敗は、このステップでの敗戦ということも可能だ。いくら優秀な要素技術を磨いても、商品としての「価値」を産み出すことに意欲を示せないなら、ユーザーが満足する製品を生み出せるはずがない。スピーカの性能だけ向上させても良いオーディオ機器にはならない。
優秀な技術というのは、単に「測定精度がよい」とか「今までにない手法」というようなものではない。確実な製品として仕上がるための「低価格化」「使いやすさ」「有用性」というような普遍的で泥臭い技術こそ、そこに商品価値も生みだせる。
事業化成功への分かれ道はどこか
もう一度、前のモデルステップに戻ろう。
事業化に当たっての重要ステップが「商品化ステップ」にあることに間違いない。にもかかわらず、「日本初の技術を」と言われ続けているがゆえに、最初の「基礎研究」や「機能試作」という中で右往左往していないかどうか、改めて自問してみてはどうだろう。
それより、基本的な製品スペックを作り上げることに、目標を切り替えるべきだ。しかも、二の矢、三の矢も視野に入れ、商品としてのレパートリーを広げることも目標としたい。
新しい商品としての価値を見いだせるかどうかは、このステップこそ勝負の分かれ目になることを肝に命じておくべきだろう。