PR

同時進行的に似た感性を育むアジアの若者

 消費行動が消極的になる「草食化」は、高度経済成長の終焉とともに消費者の可処分所得が減り始めることだけが原因ではない。欧米でも見られる成熟社会に共通する消費変化のパターンである。子供のころから豊かな社会で育ってきた若者は、そもそも物質的に飢えているわけではなく、日本の高度経済成長からバブル期に見られたような「消費至上主義」の考え方が強くないのだ。

 アジアの若者の間で消費トレンドが似てくる時代背景には、もう一つのポイントがある。それは、若者から「時差」と「距離感」を消し去った「ソーシャルメディア」の存在だ。

 「Facebook」「Twitter」「LINE」といったソーシャルメディアによって、東京にいようと、ソウルにいようと、ジャカルタにいようと、情報を共有し、同じトレンドに触れ、同じ流行の商品をほぼ同時に目にする環境が広がった。欲しい商品があれば、オンラインショッピングで購入できる。写真や動画で交流するソーシャルメディアでは、言語の壁も低い。

東南アジア、東アジアともに、日本を上回る割合でFacebookユーザーが存在する。図は『若者研究 2014-2018』から
[画像のクリックで拡大表示]

 この環境下にある若者は、早い時期から同時進行的に似た感性を育み、同じ商品に魅力を感じ、同じタレントを好きになるという現象を体感している。これから各国で社会の中核になる若者は、子供のころからソーシャルメディアを使いこなしてきた世代だ。仲間からの共感を重視し、「空気を読む」ことを心懸けるようになっている。

 かつて、せいぜい数人~数十人だった周囲の目は、ソーシャルメディアの普及で国境を越えた膨大な数の視線に膨れ上がっていく。ソーシャルメディアは共通インフラであり、これなしの人生はあり得ない。アジアのみならず、世界の若者の消費スタイルに多大な影響を与える存在なのだ。

 草食化はマイナスの側面だけが強調され、そこに注目が集まりがちである。では、アジアの若者が草食になっていくならば、商品は売れなくなっていくのか。この結論は、決して正しくない。先進国が謳歌してきた従来の大量消費社会への反省から、持続可能な「スモールライフ」を求める世界的風潮が背景にあるからだ。

 世界の若者は、前の世代よりも消費者として賢く、スマートになっている。持続可能でスモールな消費行動に、ごく自然に社会的な正しさを見出し、派手で華美な消費への欲求もそれほど持ち合わせていない。そして、若者が社会を担うようになるにつれ、この考え方は消費者全体に波及していく。

 例えば今、中国の若者の間ではスポーツタイプの自転車ブームが起きている。これは、日本と同様の現象だ。背景には、大気汚染などの環境問題が悪化するなか、「これ以上、クルマを増やして何になるのか」という感覚がある。この消費スタイルは、健康にもつながるという意味でスマートだ。

 「スモール」であり「スマート」。アジア各国の若者に共通の価値観を的確に言い表す言葉は、まさにこれだろう。各国の若者が好むファストファッションのように、安価でありながら比較的質の高いもの、つまり費用対効果を重視する姿勢にその一端が現れている。