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 かつて私はこのデータをもとに、国別に加重平均処理をして学科毎の国別ランキングを算出してみたことがある。この結果を要約すると以下のようになる。

(1)物理や化学、生理学から地学などの基礎自然科学の分野における日本の大学の総合力ランクは概ね世界で第5位程度と上位につけている。英語圏が有利になるこの評価体系において5位という順位は極めて競争力が高いことを意味している。

(2)機械や電気、情報などの工学分野では新興国大学の追い上げが激しく、既に10位程度にまで落ちている。

(3)経済や法律、社会学、MBA(経営学)などの社会科学系分野はおしなべて20位以下に甘んじており、世界学生市場における国際競争力は低い。ノーベル賞でみても、自然科学分野では非西洋圏では出色の強さを見せつける日本だが、日本発のノーベル経済学賞受賞者は生まれていない。

 結局のところ、三菱総合研究所という日本を代表するシンクタンクが描く未来予想の内容が技術論偏重になるのは、自国の成功体験が色濃く投影された結果といえるだろう。歴史的経緯を考慮すれば、ごく自然な成り行きといえる。問題は、「前提条件」ががらりと変化する未来を予測するに当たって、こうした論法が妥当なのかということだ。

情念が読めない政府系諮問機関のリポート

 これまで見てきた世界の賢人たちによる未来予測に加え、いわゆる政府系シンクタンクにおける予測リポートも各国で編纂されている。欧州安全保障研究所配下のESPASによるThe World in 2030や、フランスのシンクタンクのLEAP/E2020などが公開されており、アメリカ合衆国大統領のために中・長期的予測を行う諮問機関である米国国家情報会議(National Intelligence Council :NIC)のGlobal Trends 2030: Alternative Worlds)などは、邦訳(『2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」』、講談社)出版もされている。

 それぞれ組織力を生かして豊富なデータを用いたリポートで、冷静な分析がなされており説得力が高い。それでもやはり、例えば欧州と米国では見方を異にする部分もある。米国のリポートは、シェールガスで再生可能エネルギー問題は不発に終わるとし、中国については豊かさと覇権を充実させる前に高齢化で失速・内政不安に陥ると読むなど、冷静にだが米国の唯一性を提示する傾向が強い。同書では全編を通して「権力「覇権」「力」「ゲームチェンジ」などのキーワードが頻出する。世界のリーダーとしての目線を感じる。

 こうした部分に情念に似たものは感じられるが、前述した各界賢人の著作に比べれば、総じて角が取れた穏当なもの、と感じられる。こうした傾向は多くの政府系リポートに共通するもので、当初から「主観を排して無味無色になること」を求められた結果なのだろう。