半導体業界の今と未来を、様々な視座にいる識者が論じる「SCR大喜利」、今回のテーマは「ADASでパソコンの「Wintel」のような業界標準は生まれるか」である。日本市場の中でも特に活況を帯びている自動車分野向け半導体を考える。
先進運転支援システム(ADAS)向け半導体市場は、自動車の電子化を象徴する技術だ。欧州などで衝突防止システム搭載の制度化が進み、多くの半導体メーカーがADAS向け半導体市場への参入を目論んでいる。マイコン・メーカー、GPU(graphics processing unit)メーカー、FPGA(field programmable gate array)メーカーなど、参入している半導体メーカーの顔ぶれは多彩だ。こうした中、ADASの開発効率の向上、高品質化、低コスト化を狙って、システムを構成するハードウエアやソフトウエアのアーキテクチャを固定化した、開発プラットフォームの活用が望まれるようになった。
かつてパソコンの分野で米Intel社が供給するハードと米Microsoft社が供給するソフトを業界標準とする、いわゆる「Wintel」体制が確立した後、システムの普及は一気に進んだ。強力な開発プラットフォームの登場を求める環境が出来上がりつつある中、「ADAS界のWintel」が登場する可能性はあるのか。今回のSCR大喜利では、ADAS向け半導体市場の獲得を目指す当事者である、マイコン・メーカー、GPUメーカー、FPGAメーカー、および客観的な立場から同市場を見ているアナリストなど5人に聞いた。
各回答者には、以下の三つの質問を投げかけた。今回の回答者は、大手組み込みマイコン・メーカーのフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンで車載マイコン製品部を指揮している武藤功二氏である。
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 車載マイコングループ 日本車載マイコン製品本部 本部長

【質問1の回答】開発において、ハード、ソフト共にプラットフォームが重要
ADASにもさまざまな種類があるが、レーダーやカメラを使った前方監視(側面および後方監視など)においてはアルゴリズムの開発が必要となる。ある一定の処理能力をもったハードウエア・プラットフォーム(半導体デバイス)を前提としての開発が、ソリューション開発の近道と考える。
アルゴリズムもADASで導入される機能、例えば歩行者認識、ブラインド・スポット認知や道路標示認識によって大きく異なる。このため、半導体ベンダーの考えるロードマップと、その上で走るソフト・プラットフォームはとても重要である。