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 パナソニックの社内ベンチャー制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」(PSUF)が軌道に乗っている。ベンチャー企業の成功率は「千に三つ」といわれる中、同制度では2001年の創設以降に誕生した30社のうち10社が存続し、いずれも黒字基調だ。

 ベンチャー各社への投資や経営支援を手掛けるのは、同制度に合わせて発足したPSUF推進室である。2009年から室長を務める山内利明氏によれば、起業を志す社員は、パナソニックのような大企業にいながら野武士のごとく意欲や独立心にあふれる人ばかりだという。ただし、荒々しさだけではなく、周囲の協力を引き出すスマートさも備えていなければ成功できないと同氏は指摘する。(リアル開発会議)

 PSUFの狙いは、「破壊的イノベーション」を自ら生み出すことである。事業部門では、現行の製品や技術を改善する「持続的イノベーション」は実践できても、自らの既存事業を脅かす破壊的イノベーションを実現する新事業には踏み込みにくい。特に大企業では、その傾向は強いだろう。だが、新しい顧客や市場を開拓していくことは、企業の新陳代謝を促すために不可欠だ。そのための制度がPSUFである。

山内利明氏。パナソニック・スピンアップ・ファンド推進室室長(写真:上重泰秀)
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 必然的に、PSUF発のベンチャー企業のターゲットは、既存の事業部門が参入しにくい分野になる。巨大な組織では困難でも、身軽なベンチャー企業であれば新しい分野に挑戦しながら採算が取れるビジネスは多い。

 当初、PSUF発のベンチャー企業は既存事業との相乗効果が期待できる分野に限定していた。だが、最近はパナソニックに大きな変革をもたらす可能性を秘めていれば、経営理念や経営方針を逸脱しない限り、事業内容に制限を設けないことにした。パナソニックが得意としているハードウエアの企業に加えて、ソフトウエアやインターネットサービスの企業も生まれている。

 現在も事業を継続している10社のうち3社は、既にPSUF推進室の手を離れ、新たなステージに踏み出した。例えば、外部企業への譲渡や、ベンチャー経営者による株式買収(MBO)を経て独立、既存事業部門への組み入れなど、PSUF推進室から見ればエグジット(出口)となる事例が出てきているのだ。