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 半導体の技術と業界の今と未来を、様々な視座にいる識者が論じる「SCR大喜利」、今回のテーマは「今、改めて問い直す450mmウエハーの存在意義」である。

 450mmウエハー・ラインに向けた装置・材料技術の存在意義がグラついている。半導体デバイスの製造において、ウエハーの大口径化は、生産性を向上させるうえでの正常進化とも言える技術開発項目だ。2004年版の国際半導体技術ロードマップ(ITRS:International Technology Roadmap for Semiconductors)に初めてその必要性が記載されて以来、装置メーカー、半導体メーカーが着々と技術開発を進めてきた。

 しかし、450mmウエハー対応技術は、開発の当初からその意義を疑う声があった。装置の開発の難しさと、実現までに費やす莫大な開発費、そして対応ラインを構築する半導体メーカーの数が限定されることから、装置メーカーが、開発費を回収できないリスクが指摘されていたのだ。ただし、米Intel社、韓国Samsung Electronics社、台湾TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.,Ltd.)など、半導体メジャーと呼ばれる企業の要望に応えるかたちで、対応技術の開発が進められてきた。

 近年、半導体デバイスを多く消費する市場が、パソコンからスマートフォンやクラウド対応機器、そしてIoT(Internet of Things)へと移行してきている。これにともなって、必要とされる半導体デバイスの仕様や半導体メーカーの勢力図が、大きく変わろうとしている。その結果、半導体メジャーと言えども、450mmウエハー対応ラインの構築に、大きなリスクが伴うようになった。

 今回のSCR大喜利では、中立な立場から半導体業界の動向をウォッチしているアナリスト、コンサルタントの5人に、現時点での450mmウエハーの存在意義について聞いた。各回答者には、以下の三つの質問を投げかけた。今回の回答者は、野村證券の和田木 哲哉氏である。

和田木 哲哉(わだき てつや)
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター
和田木 哲哉(わだき てつや)

 1991年東京エレクトロンを経て、2000年に野村證券入社。アナリストとして精密機械・半導体製造装置セクター担当。2010年にInstitutional Investor誌 アナリストランキング1位、2011年 日経ヴェリタス人気アナリストランキング 精密半導体製造装置セクター 1位。著書に「爆発する太陽電池産業」(東洋経済)、「徹底解析半導体製造装置産業」(工業調査会)などがある。

【質問1】現在の半導体業界の状況を鑑みて、450mmウエハー・ラインの開発を進める意義を感じますか?
【回答】 あくまで「現在の状況を鑑みて」だが、全く感じない

【質問2】450mmウエハー・ラインの開発を継続するための必要条件は何だと考えますか?
【回答】 微細化が進行しているときは本気で開発せず、かつ開発費を半導体メーカーが負担すること

【質問3】困難な状況での開発の継続、または現時点での開発の中止、凍結で、製造装置メーカーには、どのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】 中期的には半導体製造装置業界にポジティブ

【質問1の回答】あくまで「現在の状況を鑑みて」だが、全く感じない

 以下のように4段階で、現状での450mmウエハーの必要性を検討してみた。

(第1次選抜)Samsung社、Intel社、TSMC、GLOBALFOUNDRIES社以外の半導体メーカーには、一棟5000億円とも言われる投資資金を捻出できない。
(第2次選抜)GLOBALFOUNDRIES社とTSMCにとって、ファウンドリー・ビジネスをする上で、450mmウエハーはロットが大きすぎる。300mmでも、顧客から「ロット数が大きすぎる」と苦情が出ているほどである。
(第3次選抜)Samsung社の中で、半導体事業の発言力は昔ほど大きくない。設備投資効率についても厳しい目が光っている。いつまでも、巨額な設備投資を惰性で続けられる保証はない。
(第4次選抜)旗振り役のIntel社ですら、現状、300mmラインの稼働率は決して高くない。目下、FinFETプロセスの立ち上げにエンジニアを割かれていて、450mmにかまけていられない状況になっている。
以上のように、半導体メーカーは全社脱落してしまう。

 一方、半導体製造装置業界にとって450mm化は、300mm化の時同様、開発費を負担した上に、装置市場が縮小するという装置業界に大きな負担を強いるスキームである。現状、開発を進めるべきではないというのが、繰り返しになるが結論だ。