PR

 半導体の技術と業界の今と未来を、様々な視座にいる識者が論じる「SCR大喜利」、今回のテーマである「今、改めて問い直す450mmウエハーの存在意義」、第3 回の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。以下のような、他の回答者と同じ3つの質問を投げかけた。

服部毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部毅(はっとり たけし)
 大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で材料基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学集積回路研究所客員研究員等も経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・理事。半導体専門誌にグローバルな見地から半導体業界展望コラムを7年間にわたり連載中。近著に「半導体MEMSのための超臨界流体(コロナ社)」「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」がある(共に共著)。

【質問1】現在の半導体業界の状況を鑑みて、450mmウエハー・ラインの開発を進める意義を感じますか?
【回答】 感じる。現在ではなく将来の半導体業界の状況を鑑みるべきだ

【質問2】450mmウエハー・ラインの開発を継続するための必要条件は何だと考えますか?
【回答】 (1)450mm対応露光装置の完成のめどが立つこと。(2)デバイス・装置・材料メーカー各社の足並みがそろうこと

【質問3】困難な状況での開発の継続、または現時点での開発の中止、凍結で、製造装置メーカーには、どのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】 (1)累計開発費の高騰、(2)再チャレンジのチャンス、(3)生産性向上検討への時間的余裕

【質問1の回答】感じる。現在ではなく将来の半導体業界の状況を鑑みるべきだ

 Intel社は、主力製品であるパソコン向けプロセッサーに加えて新規モバイル向けプロセッサーの不振で、製造ライン稼働率が低下し、在庫もダブついている。おまけに本来は2013年中に量産移行するはずだった14nm FinFET プロセスが本稿執筆時点でも立ち上がっていない。2013年に竣工したFab42(米国アリゾナ州にある450mm移行可能な300mmファブ)の稼働延期で装置搬入もお預けの状態で、450mmどころではない状況なのは確かだ。だからといって、こんな一時的な状況をとらえて「450mm時代は来ない」などと言うのは早計だ。

 イノベーションのジレンマに陥るIntel社の動きは鈍いものの、モバイル、データセンター、IoTビジネス、そして本格的ファウンドリーへと舵を切ろうと必死だ。近い将来、米国から新たな成長をねらうモノやシステムが次々出てくるだろう。それがどのようなモノであってもインターネットとつながり、そこでは半導体はそのコア・エンジンとして活躍し、ライフスタイルやビジネススタイルを変えることに貢献するに違いない。高機能・高性能・高集積を実現するためチップ面積も大きく、爆発的に普及すれば450mm化が必須となるだろう。

 Samsung社は最近、14nm FinFETプロセス技術をGLOBALFOUNDRIES社に供与すると突然発表した。その裏には、Samsung社が複数の大口顧客から14nmデバイスの大量注文を取り付けた(あるいはその感触を得た)のではないかと噂されている。Samsung社はGLOBALFOUNDRIES社を事実上下請けとして使い、さらにあふれそうなら両社とも協調して450mm化することになるだろう。しかし、Samsung社の14nmプロセス開発や今回の提携にCommon Platform上の朋友IBM社は一切かかわっていないという。予測しがたいサプライズの連続だ。

 今までの経験が通用しないIoT時代には、未来は誰にも予測しえないサプライズの連続だろう。トランジスタ発明者であるWilliam Bradford Shockley Jr.は、“Chance favors the prepared mind”(チャンスは、日ごろから準備していた者にしかめぐってこない)という言葉を好んで口にしていた。450mm対応技術の開発に意義を感じない人には、いつまでたってもチャンスはめぐってこないだろう。