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 半導体の技術と業界の今と未来を、さまざまな視座にいる識者が論じる「SCR大喜利」、今回のテーマは「機密情報の漏えいを防ぐことは可能か」である。

 2014年3月13日、東芝の半導体メモリーに関する研究データを韓国企業に漏らした容疑で、警視庁捜査2課は、東芝の業務提携先である米SanDisk社の元技術者を不正競争防止法違反(営業秘密侵害)で逮捕した(関連記事)。こうした機密情報の漏えい事件は過去にもあった。また、細かなノウハウなどの技術流出は過去にもかなり頻繁に起こってきたと言われている。2014年5月13日には、営業秘密情報を持ち出したとして、日産自動車の元社員が不正競争防止法違反容疑で逮捕されるという事件も発生した。

 現在の日本では、リストラなど不本意なかたちで、技術者の流動性が高まっている。そして、技術者の流動性の高まりと機密情報の漏えい抑制は、両立しがたい問題でもある。今回の事件では、文書データの持ち出しという検証しやすい形で起こった。しかし、技術者の頭の中にある機密情報が流出したとしても、立件することは困難だとも言う。

 東芝の事件が明るみになってから2カ月以上経ち、少し引いた視点でこの問題に対峙できる時期になった。今回のテーマでは、コンサルタント、アナリスト、半導体メーカーの元技術者、元経営者に三つの質問を投げかけた。そして特定の事件の背景や対策を論じるのではなく、日本の半導体関連の企業や技術者が置かれている現状と機密情報の取り扱いの在り方を論じていただく。第1回の今回は、日本の技術開発の現場を熟知し、知的財産の取り扱いのプロでもある、「開発の鉄人」ことシステム・インテグレーションの多喜義彦氏の登場である。

 各回答者には、以下の三つの質問を投げかけた。

多喜 義彦(たき よしひこ)
システム・インテグレーション 代表取締役社長
多喜 義彦(たき よしひこ)

 1951年生まれ。1988年、システム・インテグレーション株式会社を設立、代表取締役に就任、現在に至る。現在40数社の技術顧問などを務める。『日経ものづくり』にて「開発の鉄人・現場をゆく」を連載。現在、日経BP社と共同で高い潜在能力を秘めた技術の応用拡大を図るプロジェクト「リアル開発会議」を進行中。

【質問1】そもそも機密情報の漏えいを防ぐことは可能なのか?
【回答】 それが機密情報であると認識しなければ、防げない

【質問2】機密情報の漏えいが起きる主因は、漏らす個人の資質か、構造的な問題か?
【回答】 構造的な問題である

【質問3】機密情報の漏えいを防ぐために、企業はどのような努力をすべきか?
【回答】 機密情報であることの認定と表明と管理の徹底

【質問1の回答】それが機密情報であると認識しなければ、防げない

 機密情報が漏えいする問題の、最も深刻かつ危機的状況は、それが機密情報であることを認識していないという、情報を取り扱う者の意識に関わる問題だ。「猫に小判」の例えのように、いくら重要で機密にしなければいけない情報も、それを取り扱う者に機密であるとの意識がなければ漏えいは防げない。機密としての意識、価値観がなければ、むき出しのまま放っておいても、あるいは捨てても構わないと思ってしまうのは当然だ。今まで、我が国ではそのような機密情報の取り扱いについて、特別な教育を受けた者は少ないと思う。それが問題の深層にあるのではなかろうか。