構造改革費用の計上による巨額の赤字決算、劇的なV字回復の裏事情、M&Aの損得勘定…、電子・電機業界で話題の最新動向を、会計とITの専門家である金子智朗氏が読み解きます。

会計視点で見る話題の業界動向
目次
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新日鉄住金のIFRS採用で肩身の狭くなる「日本版IFRS」
2018年1月20日付の日本経済新聞朝刊は、新日鉄住金が2019年3月期から国際会計基準(IFRS)を採用すると報じた。同記事によれば、今後海外事業を伸ばしていくことを踏まえて、海外投資家が同業他社と財務情報を比較しやすくすることが狙いとのことだ。現時点でも新日鉄住金の財務担当者は海外投資家とのミー…
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ブランド価値を毀損、高くついた品質管理の不正問題
2017年秋以降、製造業の品質に絡む不正が相次いだ。神戸製鋼所では10年前から品質データを改ざんしていたことが発覚。その後、三菱マテリアルや東レも、同種のデータ改ざんがあったことを発表した。日産自動車とSUBARUでは無資格者による完成検査が問題となった。明星食品は、外部から仕入れたチャーシューが食…
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「大きいことはいいことだ」から脱却、スリム化に舵を切るGE
2017年11月15日付の日本経済新聞朝刊に興味深い記事が出ていた。見出しは「『小さいGE』へ転換」。米General Electric(GE)社が「小さなGE」を目指すという内容だ。GEと言えば、コングロマリット(複合的多角化企業)の代表的な成功事例とされてきた企業だ。しかし、前CEO(最高経営責…
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22四半期連続減収、新たな「創造的破壊」に苦戦するIBM
米IBMの2017年度第3四半期(7~9月)決算が、22四半期連続の減収となった。2017年10月19日付日本経済新聞の見出しには「ハード頼み 変化に遅れ」とある。同紙によれば、「クラウドや人工知能(AI)といった成長分野がけん引する収益構造には移行できていない」ということらしい。
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東芝メモリ売却決定で債務超過解消に前進、残された懸念とは
東芝は2017年9月20日、子会社である東芝メモリ株式会社(以下、東芝メモリ)の売却に関して、米投資会社のベインキャピタルを中心とする日米韓連合と株式譲渡契約を結ぶことを取締役会で決議したと発表した。一時は、米Western Digital社を中心とする陣営への株式譲渡がほぼ確定的との報道もあったが…
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いまだ対立する東芝と監査法人、限定付適正意見は出たけれど
東芝は2017年8月10日、延期していた2017年3月期の有価証券報告書を提出した。公開された有価証券報告書の末尾に添付された監査法人の監査意見は、連結財務諸表に対しては限定付適正意見、内部統制報告書に対しては不適正意見であった。
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売上高計上の新基準、製造業への影響を冷静に検証する
2017年7月20日、企業会計基準委員会が売上高計上に関する新たな会計基準の公開草案を公表した。これは、IFRS(国際会計基準)と米国会計基準が共同で開発した新たな売上高計上基準を踏まえて、日本基準も基本的にそれらに合わせることを目的としたものだ。日本における従来の売上高計上基準は商慣行に委ねられて…
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内部監査の指摘をもみ消した富士ゼロックスの売上至上主義
富士フイルムホールディングスは2017年6月12日、子会社である富士ゼロックスによる不正会計処理による損失額が累計375億円に上ることを発表した。最初に不正が発覚したのはニュージーランドの販売会社だったが、その後オーストラリアの販売会社でも同様の不正が発覚。その結果、当初220億円と発表された損失累…
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ソニーの業績回復は本物か、分社化の功罪を改めて考える
ソニーの業績が好調だ。同社は2018年3月期を最終年度とする中期経営計画で「グループ連結でROE10%以上、営業利益5000億円以上」とする経営数値目標を掲げている。社長兼CEOである平井一夫氏は2017年5月23日に東京都内で開いた経営方針説明会で、この中期経営計画の目標を「十分狙えるだけの力は付…
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東芝が仕掛ける法的裏技、分社化で1兆円の売上減回避
経営再建中の東芝は2017年4月24日、社会インフラやエネルギーなどの主要5事業(うち4事業は社内カンパニー)を4つの会社に分社化することを決定したと発表した。これに伴い、合計約2万人を新会社に転籍させるようだ。
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望ましい株主資本と保有比率から東芝メモリ評価額を予想する
東芝の迷走が止まらない。2017年3月期に株主資本がマイナスとなることが確実となったが、それもまだ暫定報告だ。債務超過の解消に向けた動きには、官民入り混じっての思惑が錯綜している。焦点の1つは半導体メモリー事業の分社化だ。東芝は半導体メモリー事業を東芝メモリとして分社化し、その株式売却で得た資金で債…
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東芝報道に見る日本独自の「債務超過」の使い方
先日の会見を受けて、2月14日から15日にかけての各メディアには「東芝 債務超過」の文字が躍った。多くのメディアは株主資本がマイナスになったことをもって「債務超過」と言っている一方で、「債務超過とは負債が資産を上回った状態」と説明している。しかし、東芝には2016年3月期末時点で、連結ベースの資産か…
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東芝の巨額損失、見落とされがちな3つの視点
東芝に数千億円規模の減損損失が発生する模様だ。減損損失の対象となるのは、米Chicago Bridge & Iron社の子会社で、原子力発電所の建設事業を手掛ける米CB & I Stone & Webster社の買収で計上された「のれん」だ。今回、減損対象となっているのれんは2015年末のS&W社買…
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事業撤退の判断基準となるROIC、アサヒが主要指標に導入
2016年12月8日付の日本経済新聞によると、アサヒグループホールディングスは2017年12月期よりROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益率)を経営管理指標として本格導入するそうだ。
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武田薬品の子会社売却、外国人社長が決断した合理的理由
富士フイルムホールディングスは武田薬品工業が約7割の株式を保有する試薬大手、和光純薬工業を買収する(2016年11月3日付日本経済新聞)。現在は両社の間で最終調整が進められているという。このニュースでは、買収する側よりも買収される側の武田薬品にちょっとした注目が集まっている。
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値上げで減益のユニクロ、改めて痛感した値決めの難しさ
ユニクロで知られるファーストリテイリングが2016年10月13日に発表した2016年度8月期(2015年9月~2016年8月)の連結決算(国際会計基準)は、税引き後の当期純利益が前期比56.3%減の480億円となり、2年ぶりの減益となった。
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東芝の監査法人への株主代表訴訟が教える企業統治のあり方
東芝の個人株主が2016年9月20日、同社の会計不祥事を巡ってその会計監査を担当した新日本監査法人に対して、約105億円の損害賠償請求を求める株主代表訴訟を起こした。代理人を務める「株主の権利弁護団」によると、監査法人に対する株主代表訴訟は異例とのことである。今回は株主代表訴訟と、その前提となる役員…
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為替予約で変動回避した富士重工、為替差益はそのおまけ
2016年8月24日付の日本経済新聞朝刊「4~6月期決算番付」という記事が、為替差損額を取り上げている。ここのところの円高基調によって為替差損が膨らんだ企業が多いという内容だ。為替差損が大きかった企業の上位には日産自動車、任天堂、トヨタ自動車などが並んでいる。輸出型製造業で特に影響が出た格好だ。一方…
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ソフトバンクのARM買収額に見る孫氏の覚悟
ソフトバンクグループは2016年7月18日、英国の半導体設計大手であるARM Holdings社の全株式を約240億ポンドで買収すると発表した。日本円にして3兆3000億円強。日本企業による海外企業M&Aでは過去最大の規模となる。今回はこの買収によって想定される会計上のリスクを考えてみたい。
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アローラ氏退任で再認識、ソフトバンクの諸刃の剣
ソフトバンクグループの代表取締役副社長だったニケシュ・アローラ氏が同社を退任することとなった。アローラ氏は孫正義氏が自身の後継者候補として2014年に米Google社から引き抜いた人物だ。アローラ氏の退任が明るみに出たのは株主総会前日の2016年6月21日。その前日となる6月20日には、アローラ氏の…