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 日経エレクトロニクスのコラム「編集長から」で、「なぜ本誌はこれほど薄くなってしまったのか」と嘆いて2カ月。またしても自虐ネタだと思わないでください。ここで考えたいのは製造業のこれからです。現在の雑誌の苦境は明日のメーカーの写し絵なのです。

 雑誌の事業が苦しくなってきた大きな理由は、さまざまな発信源からの多種多様な情報が世の中に溢れかえるようになったことです。インターネットの発達で誰でも簡単に情報を公開できるようになった結果、今では個人が発した文章や映像が雑誌やテレビのライバルになることも珍しくありません。

 同じことがハードウエアの世界でも起こりつつあります。今号の特集記事(記事)で描いたのは、個人でも簡単にハードウエアを作れる世界です。記事が示す通り、個人が作るハードウエアはまずは「ロングテール」の領域を埋めていくでしょう。需要が非常に限られて大企業が見向きもしないような用途です。

 例えば私が暮らす集合住宅には、公道との間にシャッターがあります。クルマで出るときにはリモコンで開ければいいのですが、徒歩で通り抜けようとすると閉まっている場合が少なくありません。もし私がその気になれば、無線で指令を受ける制御基板に我が家のリモコンを接続し、植え込みにでも仕込むことで、スマートフォンからシャッターの開け閉めを指示する仕掛けができそうです。

 ほかにも、隣接する飲食店のエアコンの騒音を検知してテレビのボリュームを上げるシステムや、風呂場がかび臭くなってきたら排水口に薬液を投入する装置、近くの海岸の様子を無線でチェックできるカメラなど、我が家ならではの需要はいくらでもあります。こうした欲求を、ものづくりが得意な個人が満たしていく将来は確実にやってきそうです。

 問題はそこで終わるかどうか。ロングテールの領域で腕を磨いた個人は、必ずや既存の企業の土俵にまで進出する気がしてなりません。あたかもブロガーや、筆が立つ各分野の専門家が、ジャーナリストの仕事を脅かしてきたように。そうした動きを後押しする取り組みもあります。次号の特集記事で解説する米Google社の「Project Ara」は、機能を担うブロックを組み合わせることでスマートフォンを作れるようにする試みです。第二のSteve Jobs氏は小学生から現れるかもしれません。

 こうした時代に備えて、電機メーカーは今から準備をしておくべきでしょう。嘘だと思うなら、今一度日経エレクトロニクスの厚みを確認してみてください。