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 2015年ごろからの本格的な市販が予定されている燃料電池車(FCV)。その普及に向けて最大の課題の1つとされるのが、低コスト化である。かつて、FCVのコストは1台当たり「億円オーダー」とされていた。それを、消費者の手が届く域まで下げていかなければならない。最終的に目指すのは大衆車並みのコスト。ただし、2015年にそれを実現することは難しそうだ。だが、ひところに比べるとFCVの大幅な低コスト化が実現されつつあることも事実。実際、トヨタ自動車では、2015年に発売予定のFCVにおいて、同社のFCVの2008年モデル「FCHV-adv」の1/20以下にコストを低減するめどを立てているという(図1関連記事)。

図1●トヨタ自動車のFCVの2008年モデル「FCHV-adv」
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 コストを1/20以下に低減するためにトヨタ自動車が実施したのが、多方面からの取り組みだ。燃料の水素を充填する高圧水素タンクの本数を減らす、モーターなどハイブリッド車用の量産部品を使えるものはそれを活用する、燃料電池スタックや高圧水素タンクなどの構造を簡素化する、燃料電池スタックの出力密度向上による同スタックの小型高性能化を通じて材料費を削減する、燃料電池スタックにおける白金触媒の使用量を低減するなど、その取り組みは多岐に渡る。中でも興味深いのが、燃料電池システムにおける加湿器の廃止だ。

 FCVの燃料電池システムには、通常、固体高分子型燃料電池(PEFC)が使われる。PEFCは、プロトン(H)伝導性のある高分子膜を電解質に用いた燃料電池だ(図2)。空気極と燃料極で電解質を挟んでセル(単電池)を構成する。燃料極に供給した水素(H2)がプロトンと電子に分解し、そのプロトンが電解質の中を移動して空気極に至り酸素と電子と反応して水になる。その際、電子が外部回路を通じて燃料極から空気極に移動することで電気が発生する。

図2●固体高分子型燃料電池(PEFC)セル(単電池)の構成
通常は、こうしたセルをセパレーターを介して積層し、燃料電池スタックとする。
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 そして、PEFCの電解質として一般的に使用されているのが、パーフルオロカーボン系の高分子膜。同膜は、湿気を持たせたときにプロトンの伝導性が高まる。このため、トヨタ自動車では従来、PEFCの空気極に供給する空気を、加湿器を使って加湿していた。