PR

独身寮で深夜まで文献読破

 入社2年目の時、主任から「排ガス規制対策のチームへ行け」と言われた。そのチームから優秀な技術者を迎え入れるに当たり、文句ばかり言って扱いにくい私がトレードになったようだ。

 これを転機に私の態度は変わった。排ガス規制対策は始まったばかりで確立された技術がなく、まさに新しい研究テーマそのものだった。毎日、排ガス対策に関する世界中の文献をかき集め、独身寮で深夜まで読みふけった。それまで私は寮で遊んでばかりいたので、同僚が「どうしたのか?」と聞いてきたほどだ。その調査結果を「排ガス対策方法」というマニュアルにまとめて社内向けに発行し、社内随一の排ガス対策技術者として知られるようになった。

 ここで排ガス対策方法について少し触れておこう。当時、排ガス対策の基本技術として俎上に載っていたのは、サーマルリアクター(T/R)方式と触媒(CAT)方式の2つだった。

 現在と異なり、当時はまだガソリン中の鉛の量が多くCATが鉛被毒によってすぐに劣化してしまう。従って、マツダのREはT/R方式で開発が進んでいた。しかし、ガソリンの完全無鉛化が法的に決まったので、私はCAT方式の可能性を調査した。その結果、CATはアイドリング状態でさえもコンバーター内温度が750℃となるので、熱劣化限界の900℃に対して余裕がないため、T/R方式を本命にせざるを得ないという結論だった。