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「REはハイパワー」は幻想

 かようにREの燃費は悪いが、それでもREはハイパワーだと信じている人がいまだに多い。しかし、それも幻想である。

 REの最大の欠点は、燃焼室が扁平(へんぺい)なので、点火した炎が燃焼室の隅々まで伝播せず、特にTrailing(T)側において途中で消炎すること、すなわちガソリンが燃焼せずに吐き出されることである。当然ながら、トルクや馬力が出るはずもない。さらに、排ガス中の未燃焼成分が排気管に吐き出された後に燃えるので、排気管が真っ赤になったり触媒コンバーターが溶けてしまったりするのである。

REの燃焼状態(ハッチング部)
図中の「ATDC」は、After Top Dead Centerの意味。

 他にも、REの構造的問題としては、「点火栓をトロコイド表面から突き出すことができないのでアイドリングなどの軽負荷運転時に点火能力が劣り燃費が悪い」、「ガスシールがアペックスシール、サイドシール、コーナーシールから成るので、低回転域でガス漏れしやすく、トルクが出ない」、「構造的にレシプロエンジンのショートストローク型エンジンに相当するので、低速トルクが出ない」、「ショートストローク型だから高回転域まで回しやすいはずなのに、ローターをアルミ合金製にできず、鋳鉄製にせざるを得ないので、高回転域まで回すことができず、馬力を稼げない」*2、などが挙げられる。

*2 REは完全に回転運動しているのではなく、ローターが遊星歯車のように偏心しながら回転している。従って、ローターに遠心力が働くため、鋳鉄製のローターで高回転を回すとローターギアが破損してしまう。一方、アルミ合金製にするとローターの熱変形が大きく、各シール類のガスシール性を維持できなくなる。
点火栓をトロコイド表面から突き出すことができない
REのガスシール構造

 レシプロエンジンを手や足で回そうとすると圧縮空気の圧力で押し戻される(いわゆる「ケッチンを食らう」)が、REは圧縮空気がスカーッとどこかへ抜けて容易に回すことができる。レース用エンジンの場合、レシプロエンジンは2万回転ぐらいまですぐに回せるが、REは1万回転が限度である。その排気量当たりの馬力は、レシプロエンジンの2/3ぐらいであり、ローパワーである。レースの専門家筋では、「REは非力」が常識となっている。REの排気量はレシプロエンジン換算で2倍だが、1000ccのREは1000ccのレシプロエンジン相当だと誤認されることが「REはハイパワー」との幻想を生んだ要因である。

 当然、世界最高峰の自動車レースである「ル・マン24時間レース」で、RE車が日本勢として唯一優勝しているではないかという反論があるだろう。それに対しては次のように説明する。

 マツダのRE車が優勝したレースでは、馬力で圧倒的に劣るRE車が後方集団をトロトロ走っていたところ、並み居る強豪車が馬力を出しすぎて次々とリタイヤしていき、いつの間にか先頭に立っていただけである。ル・マンは、エンジン性能だけではなく、ピットの構造やメカニックの作業手順もレース展開に大きく影響する総合力の勝負である。当時、ル・マンでは規則変更によって翌年以降はRE車が出場できなくなったため、最後のチャンスということで全社プロジェクトを組み、タイムロスを最少に抑えながら最後まで走りきるための総合的なシステムを緻密に構築した。REの非力をカバーした戦略の勝利だったのである。