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バブル経済に乗じた亡霊

 バブル経済末期の1990年、マツダは従来の13B型REと3ローターの「20B」型RE(レシプロエンジン換算で4000cc)を搭載した「ユーノスコスモ」を発売した。開発主査は20B型REのあまりの燃費の悪さに苦悶したが、そのまま発売された。購入者は、柄杓でガソリンをばらまいて走っているような1~3km/Lのハンパない燃費に愕然としたことだろう。20B型REを搭載したユーノスコスモは、5年間で数百台しか売れなかった。石油ショックの時に明らかになっていたREの本質が、バブル経済に乗じて亡霊のごとく現れ、マツダを苦境へと陥れた。後にマツダが米Ford Motor社の傘下に入らざるを得なくなった要因だった。

 私が2000年にマツダを退社した後、Ford Motor社による支配の下でRE消滅の危機があった。だが、「サイド排気口」という画期的な方式を採用した「RX-8」でREは息を吹き返した。

2003年に発売した「RX-8」(写真:マツダ)
RX-8向けに開発した「RENESIS RE」(写真:マツダ)

 サイド排気口については、私が新入社員時代に3カ月で7年分のREの知識を修得したRE実験事実速報に次のような報告があった。「サイド排気方式は、Trailing(T)側の未燃焼成分を排気口へ吐き出さないで次の行程に持ち込むようになる。さらに、吸排気のオーバーラップが少なくなるので、残存燃焼ガス量が少なくなって燃焼が改善され、排ガス中のHCが半分になる。しかし、排気口にオイルスラッジが堆積して目詰まりを起こすので採用できない」。

 しかし、当時の「カチカチ山のタヌキ」のオイル消費に比べれば、その後のREは改善しているので目詰まりは起こさなくなっているだろうし、そうなればHC半減による燃費改善と排ガス対策システムの簡素化という大きな効果を期待できる。サイド排気方式を持ち出した技術者は、昔の報告書を読み、固定観念にとらわれることなく挑戦した結果、RX-8を生み出したのではないか。

 それでも、サイド排気口はREの「扁平な燃焼室」という構造的問題を解消するほどの効果があるわけではない。そして、とうとう2012年にマツダはREの生産中止を決めた。

 今もREの復活を期待している人は多い。そんな人々がREに抱いている夢やロマンを壊すような話で本当に恐縮なのだが、事実は冷徹に見る必要がある。REに憧れてマツダに入社した私だが、技術者として顧客目線で冷静に事実を見ていた。