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時代を牽引した主役の変遷

 さらにS字カーブについての検証を進めていきたい。未来予測という観点から極めて重要な、人の集合体である組織や国の成長過程についてである。

 図1は主要各国における1人当たりのGDP(国内総生産)の推移から、各時代を牽引した主役の変遷を見たものである。現代につながる西洋の時代は、15世紀半ばの大航海時代に始まった。

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 スペイン・ポルトガルから、やがて主役の座はオランダへと移り「栄光の17世紀」と呼ばれる時代に入る。世界初の株式会社とも言われるオランダ東インド会社がアジアの植民地経営で成果をあげ、一大海洋帝国を築き上げるに至った。

 往時オランダの貿易産業を支えたイノベーションは「フリュート船」と呼ばれる新型の帆船だった。アムステルダムやロッテルダムは、航行速度と積載量に優れる新造船の製造・販売・整備の一大工業地帯となったのである。世界を席巻したオランダ船団は他の欧州諸国のすべてを合わせたよりも6倍もの量の物資を運んでいたという。

 しかし蒸気機関の発明がこのオランダを主役から引きずり落とすことになる。18世紀末には産業革命を成功させた英国へと主役の座が移るのだ。1776年に実用化に至った蒸気機関が本格稼働を始め最初の工業化に成功する。1860年代にはマンチェスターは世界の工場と称され、綿工業による殖産興業に成功した。

 英国が強大な海軍力と国際金融支配によって世界の秩序を維持していたパックス・ブリタニカの19世紀が終わると、第2次産業革命を牽引する米国やドイツへと世界の中心は移動していく。

 内燃機関や電動機が量産化され、一般生活に用いる耐久消費財の世界で科学技術の恩恵を実感できるようになるのが20世紀初頭である。T型フォードの量産が始まるのは1908年であり、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の前身となるEdison General Electric Companyが創設されたのは1889年のことである。その後、20世紀前半の2度の大戦を経て、米国は主役の座を確固たるものとして今日に至っている。