承前

 「RX-7」のリコールで会社への「倍返し」(リコール費用を倍にして会社に返すこと)を誓った私は、ロータリーエンジン(RE)の排ガス問題に決着を付けることにした。もう後輩に同じ苦しみを味わってほしくなかったのだ。

「サバンナRX-7」(写真:マツダ)

 私は、米環境保護庁(EPA:Environmental Protect Agency)が指定した市場模擬走行モードである「AMAモード」に疑問を感じていた。加減速が多くて最高車速が低い連続運転のAMAモードは、米国市場の走行状況を代表しているとは思えなかった。

 走行実験課に依頼し、全米の代表的な地域で実際のクルマやエンジンの走行データを採取した。このデータを基に“市場走行パターン”を開発した。これは、エンジンの停止・始動も含めた市場の走行状況を、社内の車両台上走行試験機で再現するためのものである。

 さらに、全米各地のガソリン中の鉛とエンジンオイル中のリンの混入状況*1を全米石油協会が定期的に測定・公表していたので、それらのデータを基に“エミッション耐久試験法”を開発した。同試験法では、前出の市場走行パターンにおけるガソリン中の鉛とオイル中のリンの量を、市場のそれぞれ90パーセンタイルで調合したものを使用する。

*1 ガソリン中の鉛とエンジンオイル中のリンは、触媒に付着して被毒劣化を起こす。日本ではガソリンが完全無鉛になっていたが、米国ではまだ微量の鉛が混入していた。

 このエミッション耐久試験法の妥当性を検証するために、触媒RE車6台を全米各地のディストリビューターにモニター配置し、約8カ月走行した後に触媒を回収した。これは、市場の走行状況のデータとなる。そして、エミッション耐久試験法で走行したクルマの触媒について鉛およびリンの被毒と熱劣化状態を調べ、市場から回収した触媒と比較し、同試験法が市場の走行状況をほぼ1対1で再現していることを確認した。この結果を受けて、「エミッション耐久試験法で5万マイル走行してエミッションが規制値をクリアしていれば、市場の5万マイル後でもクリアできる」と規定した。これによって、「AMAモードはクリアしているのに市場でフェイルする」という問題を防げる。