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大事なのは「馬の骨」に託すこと

――米国とは好対照ですね。その差はどこから来るのでしょうか。米国にはプラグマティズムの伝統があります。非常に合理的に物事を考える。対して日本は「お上意識」がまだまだ強い。そういう差が大きいのでしょうか。

山口 その差はあるかもしれません。もともと米国は、科学よりもイノベーションで出来上がった国です。19世紀の激動期に、トーマス・エジソンをはじめいろいろなイノベーターたちが生まれ、産業を興しました。1930年以後には、ナチスを逃れた科学者が大量にやって来て、彼らを結集させた国や民間の中央研究所がうまく回り始めた。

 だから、伝統的にイノベーション、つまり社会革新の感覚がDNAに入っているのだと思います。海のものとも山のものとも分からない若き科学者たち、私は「馬の骨」と呼んでいますが、彼らに1億円あげてみようと託すわけです。馬の骨に託す、そこが大事ですね。

 おもしろい図をお見せしましょう。この2枚の図は、学問分野の風景を表現した図で「分野知図」と呼んでいます。藤田裕二さんという私たちの研究メンバーが開発したもので、39の学問間の距離を丁寧に調べて地図風に仕立てたものです。私は、SBIR被採択企業の代表者の出自を1年がかりで丹念に調べました。そのうち博士号取得者について分野知図に当てはめた結果がこの2つの図で、上が日本、下が米国です。

日本のSBIR被採択企業について代表者の出自を調べ、博士号(Ph.D.)取得者を「分野知図」に当てはめた。対象期間は1998~2010年。図中の数字は「修士修了」「学部卒」「中/高/高専卒など」も含めたときの割合で、母数は3559、出自不明は1683。
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米国のSBIR被採択企業について代表者の出自を調べ、博士号(Ph.D.)取得者を「分野知図」に当てはめた。対象期間は2011年。図中の数字は「修士修了」「学部卒」も含めたときの割合で、母数は1034、出自不明は389。
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