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山口 これを見ると恐ろしいことが分かります。日本ではSBIR被採択企業の代表者の89%が学部卒以下です。博士号を持って大学の知を産業に生かした人は、7.7%しかいません。一方、米国は、SBIR被採択企業の代表者の74%が博士号を持っています。つまり、SBIR政策を通じて大学で生まれた最先進の知識を体系的にイノベーションに転換してきたということです。しかも米国では、物理学や化学や生命科学など純粋科学を修めた起業家が最も多い。純粋科学者であればあるほど、イノベーターとして成功している。

 要するに、国を栄えさせる根本思想が違うのです。米国は中央研究所モデルがなくなった後、大学発ベンチャーこそが国を再生させるエンジンになると考え、毎年2000億円もの予算を投じて無名の科学者たちをイノベーターにすべく支援してきた。その結果、30年間で4万人もの若き優秀な技術起業家が誕生した。一方、日本はそのような若き無名の科学者たち「馬の骨」を信頼できなかった。結果的にSBIRという国のお金を「実績のある中小企業」にばらまき、国税をドブに捨ててしまった。

――うーん、非常にショッキングなデータです。しかし、日本でも大学発ベンチャーをつくろうと、多額の国家予算を大学に上げましたよね。

山口 残念ながら結局のところ、全部失敗しました。なぜかというと、大学の先生にあげるからです。先生にあげたら研究費に使うに決まっているではないですか(笑)。

――私たちは日本と米国の創発性の差を「ベンチャー精神があるかないか」というように、個人の資質の違いというか国民性の違いに求めがちです。しかし、実は米国では政府がベンチャー企業の創設を制度的に誘導していたということですね。そうした新しいビジネスモデルや商品を作るという意味での創発と、ニュートンのような科学者たちの創発は同じだと考えていいのでしょうか。

山口 同じだと思います。ただし、科学の場合は、誰も気が付いてないことを思い付かなければだめなのでシビアですね。ビジネスの場合は、アイデアとしては他の誰かが思い付いていたとしても、ビジネスモデルの展開で一ひねりする余地がありますから、そういう意味では、ちょっと能力的に違うかもしれません。それでも、ブレイクスルーまでのプロセスは同じですね。