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 シートメーカーのデルタ工業で開発部門を率いる藤田悦則氏は、稀代のアイデアマンである。これまでに出願した特許は約1000件。その多くが成立した。救急車用防振装置や3次元編物シート、居眠り運転警告装置といった数々の発明によって、文部科学大臣表彰科学技術賞などさまざまな表彰を受けた経歴を持つ。

 これらの発明は、藤田氏が一人で考えたものばかりではない。むしろ、誰かと“無駄話”をしているときにこそアイデアが浮かんできたという。対話を通じた他者との共鳴や相互作用こそアイデアの源泉であると悟った同氏は、そのオープンな開発姿勢を全社に展開しようとしている。そこから新たなビジネスの芽が生まれつつある。(リアル開発会議)
藤田悦則氏。デルタ工業 取締役、デルタツーリング 常務取締役

 私は最近、社内の若い技術者に「ギブ・アンド・ギブ」の効用を説いている。普通の企業は重要な技術ほど隠そうとするが、他人に見せただけで簡単に真似されるようだったら、それは大した技術ではない。

 もちろん、特許として権利化するまではオープンにしてはならない。しかし、いったん権利化した後は、相手に心を開いてもらうための道具としてどんどんオープンにしていけばいい。そうすれば向こうからチャンスはやってくる。世の中を変える技術や製品は、ギブ・アンド・ギブの関係から生まれてくるものだ。

 私の経験では、一人でいくら考えても良いアイデアは出てこない。良いアイデアが生まれるのは、誰かと話をしているときだけである。共鳴あるいは相互作用といった要素がアイデアの創出には欠かせないのだろう。

 だから、私は人と会うときにはとにかく相手をリラックスさせる。最近は人の似顔絵を描くようになったのだが、これも相手の緊張を和らげるためだ。アイデアの創出には、リラックスできる環境が大きな役割を果たすのである。