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 SCR大喜利、今回からのテーマは「TSVの真価を量る」である。半導体の3次元化技術として、FinFET、3D-NANDに続いて、TSV(through silicon via)がついに実用フェーズに入った。その先陣を切って、韓国Samsung Electronics社が、TSVを用いた3次元積層DDR4型シンクロナスDRAMの量産を開始した。原理的には、汎用性の高い高集積化手法であるTSVの実用化は、先行きが不透明になりつつある微細化に代わる半導体の進化基軸として期待される。

 今回のSCR大喜利では、TSVの実用化によって期待できること、TSVが実用化したとしても期待できないことを、“Mooreの法則”に沿って進化し続けてきた半導体とその利用技術の経緯を踏まえながら、明確にする。今回の回答者は野村證券の和田木哲哉氏である。

和田木 哲哉(わだき てつや)
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター
和田木 哲哉(わだき てつや) 1991年東京エレクトロンを経て、2000年に野村證券入社。アナリストとして精密機械・半導体製造装置セクター担当。2010年にInstitutional Investor誌 アナリストランキング1位、2011年 日経ヴェリタス人気アナリストランキング 精密半導体製造装置セクター 1位。著書に「爆発する太陽電池産業」(東洋経済)、「徹底解析半導体製造装置産業」(工業調査会)など

【質問1】TSVを用いた半導体の3次元化技術には、微細化に代わって“Mooreの法則”を継続させるポテンシャルがあるのか?
【回答】ポテンシャルは十分にある

【質問2】TSVを用いた3次元化技術の応用を拡大するための条件は何か?
【回答】 TSVならではの特性を活かした用途開拓、その後は生産技術の習熟と洗練による低コスト化

【質問3】TSVを用いた3次元化技術が実用化することで、どのようなビジネス・チャンスが新たに生まれるのか?
【回答】ユーザー、装置に様々な事業機会がある

【質問1の回答】ポテンシャルは十分にある

 微細化が困難に直面し、停止したとしても、セット・メーカーからデバイス・メーカーに対する「より小さく」「より速く」「より低消費電力で」という要求は不変である。微細化に代わって、これらのニーズに応えることができる可能性があるのがパッケージの高度化である。かつては、SiPが、微細化だけでは実現できない、デバイスの小型化、低消費電力化、高密度化という要求を背景に、一気に市場が立ち上がり、装置業界にも大きな恩恵をもたらした。

 SiPをさらに進化させた高密度パッケージとして期待されていたのがTSVである。TSVは、SiPを大きく上回る消費電力の低減、高集積化に加え、高速データ転送が可能である。従来のワイヤ・ボンディングでは上下のデバイスとの接合に使える配線は100~200本と限られていたが、TSV技術を使えばμm単位の間隔で貫通電極を配列できるため、数千本単位での接続が可能となる。Wide I/O DRAMでは、TSV技術の導入により、データ転送速度は従来型DRAMの数倍になり、消費電力も半減以下とすることができるため、高速データ転送が必要なスマートフォン、サーバー向けの需要が見込まれていた。

 さらにデバイス間の接続距離が大幅に短くなるのでノイズを受けにくくなり、信号の遅延、減衰、波形の劣化が少なく、信号の増幅のための余分な回路が省ける。電流ロスがなくなり、省電力化にもつながる。メモリ・ロジック混載デバイスでは、設計ルールが異なる両者が混載されるため、片方の性能を犠牲にしなければならなかったが、TSVは各々製造したデバイスを積層すればよく、性能面での制約要因がない。目下、TSVの市場規模は5~10億米ドル程度。2/3がCMOSイメージセンサーで、1/3弱が自動車向けのセンサーであり、残りがLEDやメモリーなどである。条件さえ整えば、市場が一気に拡大する可能性はある。