パワー半導体の分野で、SiCやGaNなど化合物半導体系の材料を使った製品開発が活発化してきた。そして、パワー半導体を供給するメーカーごとに、技術開発と市場開拓の戦略に差が見えてきている。
独Infineon Technologies社は、米International Rectifire(IR)社を買収し、既に製品化しているSi系、SiC系の製品にIR社のGaN系の製品を加えて、広範囲な用途の製品をカバーする体制を整えた。また、東芝は2014年8月末のディスクリート半導体の製品戦略発表で、次世代パワー半導体としてSiC系とGaN系の両方で事業を展開することを表明。SiC系を販売しているサンケン電子もGaN系のサンプル出荷を開始した。これに対しロームやシャープ、三菱電機、ルネサス エレクトロニクス、デンソーなどはSiC系に、富士通セミコンダクターはGaN系に注力し、それぞれのデバイスの特性に合った特定市場を中心とした応用開拓を進めようとしている。
今回のSCR大喜利では、「パワー半導体の技術マップを探る」と題し、材料を軸としてパワー半導体事業の先行きを見通すことを目的とした。今回の回答者はアーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏である。
アーサー・D・リトル(ジャパン) マネジャー

【質問1の回答】材料物性ゆえの緩やかな棲み分けは継続
SiC系やGaN系それぞれで普及タイミングは異なるだろうが、究極的には原理的な差異から棲み分けが維持されるのではないか。もちろん一部の用途領域において境界線は曖昧であろうが、原理的(物性的)に大容量・高電圧に適したSiC系は産業用途中心に、小容量・高周波に適したGaN系は通信用途中心に棲み分けが続くと見る。
ただし、例えば近年でもSiCのウエハー・コスト低下やGaNのノーマリーオフ化の目途などが話題に上ることが多いが、それらに代表される今後の技術開発やバリューチェーン確立の動向に左右されて、それぞれの本格普及のタイミングは異なってくる可能性があることには留意すべきだろう。