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 ウォール・ストリート・ジャーナルの報道については、台湾の経済紙『工商時報』が2014年10月24日付で論評を掲載した。まず、フォックスコンと四川省成都市政府による第6世代のLTPSパネル生産ラインプロジェクトが破談に終わったのは、パネル産業の低迷を背景に資金調達が難航したためだ、と紹介。さらにフォックスコンが2014年、プロジェクトの復活を試みたが、中国自前のパネル産業を育成したいという中国政府の意向を受けた四川省政府が同年9月、フォックスコンの提案を拒絶したとした上で、鄭州の計画の是非も中国政府の意向次第だとの見方を示していた。さらに別の台湾メディアの中には、四川省での経緯を踏まえ、鄭州を含めて中国にパネル工場を建設するのは難しいのではないかとの見方が広がっていた。

 ところが、である。同年11月10日に会見した中国の習近平国家主席と韓国の朴槿恵大統領が、両国が交渉を進めていた自由貿易協定(FTA)を締結することで実質的に合意、これにより中韓が10年以内にパネルをゼロ関税化することが確定的になった。台湾紙『経済日報』(同月16日付)によると、フォックスコンの郭董事長は同会見から5日後の同月15日のインタビューで、「FTA妥結で中韓は10年以内にパネル関税をゼロにするが、台湾系に対しては5%の関税を維持する。結果は明らかだ。関税により生まれる価格の差で、台湾系業者においては顧客の一部が離れる可能性がある。台湾系業者の生産能力は2015年以降、遊休状態になる恐れが出てきた」と危機感を露にした上で、「仮に私が外資企業なら、台湾には投資しない」とし、台湾に対する投資計画を縮小し、台湾以外の国・地域にシフトすることを考える必要があると述べた。

 郭氏の発言を受け、台湾の市場や業界では、フォックスコンがInnolux社の台湾高雄工場にLTPS工場を設立する可能性はなくなったとの観測が強まった。しかし、再び「ところが」である。前述のインタビューの5日後の同月20日、フォックスコンは高雄工場の建設を発表したのだ。20日の会見に出席した郭氏には、台湾メディアから当然、「私が外資企業なら台湾には投資しない」との発言と矛盾するのではないかとの質問が飛んだが、郭氏は、「それはインタビュアーが、『もしあなたが外資だったら』と誘導したからだ。私自身が台湾に投資しないと言ったことなどない」と涼しい顔で答え、「高雄に設立申請を出したのは1~2カ月前のことであり、急に思い立ってのことではない」と述べた。