承前

 私はマツダにおける標準化のチャンピオンとして、米Ford Motor社(以下、フォード)と技術標準整合化を進めていたが(第12回参照)、所属は「R&D品質企画室」であり、本来の仕事はR&D業務全般を改善して長期的に品質を高めることだった(第10回参照)。R&D品質企画室は、1998年に「共通化・品質推進グループ」を改称した組織だった。この頃には、世間もマツダも共通化のことはすっかり忘れ去っていた。私も共通化活動は、次のブームが来るであろう10年先に延期していたので、組織名の変更は適切だったといえる。

 当時、マツダのR&D部門を統括していたMartin Leach(マーティン・リーチ)常務は、フォードの製品開発システム「FPDS」(Ford Product Development System)に相当するMPDS(Mazda Product Development System)をつくるようにR&Dビジネス企画室に指示を出し、私はその品質システム領域を担当した。ここでの品質とは、「不具合」のようなネガティブ品質だけではなく、「質感」のようなポジティブ品質も含む。コストを除く、あらゆる商品性が対象だった。

 リーチ常務は、MPDSを単なるFPDSのコピーではなく、FPDSよりも優れたシステムであることをフォードに訴求したかったようだった。そこでR&Dビジネス企画室は、東京大学の藤本隆宏教授が提唱する日本発の「フロントローディング」モデルを基に、開発のマイルストーンを定義し、各マイルストーンまでになすべきことや仕上がりの評価基準(G:Green、Y:Yellow、R:Red)などを定めて、MPDSの骨格を形成していった。

 私は、東京理科大学の狩野紀昭教授(現・名誉教授、デミング賞本賞受賞)が提唱した「顧客満足モデル」(狩野モデル)を基に品質改善を展開した。狩野モデルとは、顧客にとっての品質を左右する、「製品に不具合がない」(当たり前)要素と「製品の魅力を向上する」(魅力的)要素を峻別したシンプルなランキングで品質特性を表現する方法であり、品質の着眼点とその改善方向を示唆する有効な手段である1)。狩野モデルは、フォードのイントラネットで調べたところ、フォードの中でも“Kano Model”と呼ばれ、商品づくりの基本的な考えに位置付けられていたが、具体的な方策はまだ確立されていなかった。。

狩野モデル
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