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 「パワー半導体 4.0」です(日経エレクトロニクス12月22日号の特集記事)。この言い回しで表したかったのは、今が歴史的な転換点にあること。SiCやGaNといった新材料の投入は、電力変換の分野を一変させる可能性があります。折しも青色LED向けGaNの研究でノーベル賞を受けた天野浩氏は「いずれは新幹線の重い変圧器を半導体で置き換えたい」と語っていました(同氏のインタビュー)。

 パワー半導体の進化を推進する原動力は、機器の低消費電力化や小型化に対する飽くなき要求です。筆者はそこにもう1つ付け加えたいと思います。機器の「自由に動き回る化」です。情報機器の分野では「モバイル化」と言えば済むのかもしれません。かつてのパソコンは、今ではスマートフォンやタブレットになって、人々が自由に持ち運べるようになりました。その結果、一挙に増えたのが電池で動く製品。電池の進化はゆっくりですから、電力変換の効率向上が電池駆動時間を伸ばす上で重要になるわけです。今回の「4.0」の動きも、これまでで最大級の電池駆動製品である、モーターで動く自動車が大きな牽引役でした。

 機器の「自由に動き回る化」は、今後ますます進展する見込みです。自動車と同様にモーターを組み込んだ機器も、どんどん増えていくでしょう。いわゆる「パーソナルモビリティー」のような人々を運ぶ機器、空を飛ぶドローンや各種の作業用ロボット、そしてソフトバンクが来年発売する「Pepper」などの家庭用ロボットまで。それらはやはり電池が駆動源で、効率の高い電力変換技術への要求はうなぎ登りに高まっていくはずです。

 この動きと並行して、動き回る電子機器には、それなりの知性が組み込まれていくと考えています。こうした機器に電池が必要なのは、必要な電力をタイムリーに届ける手段がないから。これらの機器に必要な知性は無線経由でクラウドから届くのでしょうが、万一接続が途切れてしまうと、適切なときに適切な判断を下せない可能性があります。自動運転車の目の前に子供が飛び出した時に「圏外でした」ではお話になりません。だからこそ機器側にも何らかの知性が宿るはず。幸い、機械の知性を司る半導体にはムーアの法則が適用できますので、自由に動く機械はどんどん知恵をつけていくでしょう。

 その結果、何が起こるのでしょうか。特集タイトルのそもそものネタ元になった「Web 2.0」は、情報の送り手と受け手の垣根がなくなり、誰でも情報を発信できる時代を表す言葉でした。今のWebがいくつなのかはわかりませんが、いずれ人と機械の区別はなくなり、知能を持った機械が自由に情報発信を始めるのかもしれません。