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「やれない理由を探すな、やれることからやれ」。これが「世界初」に挑戦してきた谷教授が指導者として掲げる標語だ。

 そのまま家に帰る気持ちになれず、また実験棟に戻ってデータの分析などを続けて夜を明かした。実験につぐ実験のなかで、吸着材にもさまざまな工夫が凝らされて、確実にエンドトキシンが除去されていると自信が持てるようになった。除去された数が計測できない以上は信じられないと学会で反論も浴びたが、敗血症犬の治癒率が目に見えて向上したことが証明している。夜中の電話もピタッとやんだ」

 日本化学会は、トレミキシンを開発した東レおよび東レ・メディカルの研究者と滋賀医科大学外科第一講座の医師に対して「化学技術賞」(2000年度)を授与した。その授賞理由に、開発の二つの意義が挙げられている。以下、原文のまま紹介しよう。

 ――第一の意義としては、副作用のために投与することができない抗菌剤を繊維表面に固定化して体外循環に用いるという材料設計の新しいコンセプトを医用高分子分野に提供したことである。

 第二の意義としては、体外循環による毒素の体外への除去により敗血症の治療の可能性を証明できたことである。これは敗血症治療分野の学会に大きなインパクトを与えた。

 本技術の開発中に、抗エンドトキシン抗体などの薬が多数開発され、臨床試験まで進んだが、いずれも毒性が強い、効果がないなどの理由で製品化されていない。本技術はエンドトキシンを体外に排除することによって治療効果を出しており、体外循環の意義を深めた。よって、本技術はここに日本化学会化学技術賞に値するものと認められた。――